成果発表会(21/03/05)レポート / 優秀修了生インタビュー

SecHack365 2020 / 成果発表会(21/03/05)レポート /
優秀修了生インタビュー2021.05.26

SecHack365-2020 Presentation event week

成果発表会(3月5日)

3月5日(金)、2020年度の成果発表会が行われました。2018年度は秋葉原の会場で一般の来場者を迎え開催しましたが、コロナ渦の影響で2019年度に続き2020年度もオンラインでの開催になりました。
それでも全国からの参加者に向けオンラインで自らの作品を発表したことは、今後の活動においてもプラスになったと思います。SecHack365でもそんな修了生のものづくりの成果を今後も発信し続けていきます。

7か月間、オンラインでひたすら走り切った修了生の今後の活動にエールを送るとともに、これからのSecHack365トレーニーに向けて、2020年度の優秀修了生に率直な感想と各コースマスターからのひとことをインタビューしました。

2020年度成果発表会ONLINE

優秀修了生インタビュー

開発駆動コース 優秀修了生黒澤 佑太さんYuta Kurosawa

あなたにとっての「SecHack365」を一言で言うと?
「やりたいことをやらせてくれる修業の場」です。
私にとってのSecHack365は最初から最後まで、ハッカソンという気はあまりなく、むしろ、説明の大切さ等に気づくことが出来たり、自分のやりたいことについて悩むことが出来たりする修業の場という気がします。
ただ、修行と言っても堅苦しいものではなく、自分の扱うテーマを大きく変える(私は応募時と最終発表時とではテーマが大きく変わっているので)など、自由な場であるとも感じています。

01優秀修了生に選ばれた感想を聴かせてください。
自分は選ばれることはないと思っていたので、嬉しさよりも驚きのほうが大きいです。
選ばれたのは、一人だけで取り組んでいるだけでは得ることの出来なかった、トレーナーやトレーニーの方々からのフィードバックのおかげだと感じています。 約一年間で学んだことを活かし、今後の活動を続けていきたいです!

02どんな作品を作りましたか?なぜその作品を作ろうと思いましたか?
カジュアルにDIDを扱うシステム「Cassis」を作りました。
Cassisを使うことで、DIDというID情報を扱う仕組みを簡単に使うことが出来ます。
作った理由としては、DIDを使った認証をしてみたいと考え、フレームワーク等のデモを試しているうちに、DIDを単に「使う」までの道のりが単純に面倒だと感じたためです。

03応募前から無事修了を迎えるまでの約1年間はどんな日々でしたか?
喜びと苦しみが交互に来る1年間だったと思います。
自分のやりたいことを相手にうまく伝えることが出来たときや、作品に対する良いフィードバックが得られたときは嬉しかったです。
しかし、それもつかの間、フィードバックを元に作品の方向性や有用性について考えることは、なかなかアイデアが出ず、苦しかったように思えます。
特に、どのようにすれば相手に適切な内容を使えることができるかについて考え、試行錯誤したことが一番苦労したと思います。

04SecHack365で得られたことはどんなことですか?
沢山ありますが、特に「説明の大切さ」です。
以前は、相手に説明をするときに説明の粒度や丁寧さなどを気にせずに伝えていて、また、伝わったところで…と考え、諦めていた部分がありました。
しかし、作品の発表会などの発表する機会を通じて、伝わったときのフィードバックの質や量などのメリットに気づくことが出来ました。

05今後やりたいことや目標はありますか?
作った作品のブラッシュアップはもちろんのこと、作品のアイデア出しの過程で出てきたアイデアを振り返ることをしたいです。
アイデア出しの段階で、これはないなと感じたものでも、少し経つと改善点が見えてくることに気づきました。
このようなことから、今後の目標は「面白いものを作る」事だと思うようになりました。

06SecHack365の応募を検討されている方にメッセージをお願いします
SecHack365は多様なトレーナー/トレーニーの方々と相談したり、刺激をうけたりして、ものづくりができる場です。
また、約1年間にわたって開催されるため、自ずと継続する力もつけることが出来ます。
応募するかどうかを迷っている方も、まずは応募してみてください!

学習駆動コース 優秀修了生工藤 蒔大さんShio Kudo

あなたにとっての「SecHack365」を一言で言うと?
「学校のようなもの」です。
ものづくりを行いながら、様々なことを学習することができます。そして、技術的にも精神的にも大きく成長することができます。また、仲間と出会い、作品にアドバイスをしたり、一緒に作品を作ったり、さらには一緒に何かに挑戦したりすることができます。ここで出会った仲間は、かけがえのないものになると思います。

01優秀修了生に選ばれた感想を聴かせてください。
つよいトレーニーがたくさんいる中、優秀修了生として選んでいただき、とても嬉しいです!また、私がこの作品を作り上げることができたのは周りに恵まれ、様々な手助けがあったおかげだと思います。お世話になったトレーナー、アシスタント、トレーニーの方々、本当にありがとうございました!

02どんな作品を作りましたか?なぜその作品を作ろうと思いましたか?
簡単かつ安全に鍵を開けるために2つの作品を作りました。1つ目は、指紋組み合わせ認証を搭載したスマートロックです。指紋組み合わせ認証は、生体情報(指紋)と知識情報(組み合わせと順序)を組み合わせた多要素認証です。2つ目は、握るだけで解錠できるスマートドアハンドルです。セキュアな生体認証である静脈認証が外側のドアハンドルに埋め込まれています。

03応募前から無事修了を迎えるまでの約1年間はどんな日々でしたか?
応募課題にあまり時間をかけることが出来ず、不安でした。合格の電話が来たときは、嬉しかったです。最初のオンライン上の集まりのときには、トレーニー同士緊張していましたが、徐々にうち解けていきました。ものづくり自体は、なかなか計画通りにいかず、締め切り駆動開発になってしまいました。また、トレーナーを囲む会などのイベントもよく開催されていました。コロナ禍ということもあり、コミュニケーションの機会というのは貴重であったので、交流ができて楽しかったです。

04SecHack365で得られたことはどんなことですか?
SecHack365を通して、知識や技術、人脈を得ることができたと思います。トレーナーからの指導、アシスタントやトレーニーからのアドバイスから、知識や技術を得ることができます。また、SecHack365には発表する機会があり、発表に関する技術も磨くことができます。そして、トレーニーだけでなく、アシスタントやトレーナーと交流することができます。

05今後やりたいことや目標はありますか?
私が作った作品は、まだまだ未完成な部分も多いので、開発を継続し、完成度を上げていきたいです。そして、作って終わりにするのではなく、誰かに提供して使えるようにしたいです。また、SecHack365で培った経験を生かして、様々なイベントなどに挑戦してみたいです。今後も、ものづくりを行っていきたいです。

06SecHack365の応募を検討されている方にメッセージをお願いします
SecHack365では、セキュリティに関する知識や技術を得ることができます。また、個性豊かなトレーニーやトレーナーに出会うことができます。365日、1年間ととても長いハッカソンですが、修了したときには技術的にも精神的にも大きく成長できると思います。少しでもSecHack365に参加しようと思っているなら、ぜひ応募してみて下さい!

思索駆動コース 優秀修了生大畑 和也さんKazuya Ohata

あなたにとっての「SecHack365」を一言で言うと?
「締め切り駆動コース」です。
これはずっとだらだらしていて締め切り直前になって慌ててパソコンを開くという怠惰な意味では決してありません。SecHack365はとても優秀なトレーニーが集まっているので他の場所なら「頑張った!これで十分かな」と思える出来のものでも、SecHack365だと「周りと比べるとまだまだだな。がんばらなきゃ」という気持ちになります。その結果締め切り駆動コースになってしまうのです。しかしポジティブに考えると、自分で思っている上限からさらに一歩上に行けるということなのでとてもありがたいです。

01優秀修了生に選ばれた感想を聴かせてください。
優秀修了生として活動を終えることができてとても嬉しかったです。自分の作品は最終発表期限のギリギリまで迷走していて、きちんと形にすることができるかどうかもわからない状態でした。そんな状況でしたが諦めずに最後まで試行錯誤を重ねた結果、このような評価を頂くことができて大変光栄です。

02どんな作品を作りましたか?なぜその作品を作ろうと思いましたか?
SNS上の誹謗中傷などの攻撃的な投稿を可視化するツールを作成しました。このツールは時間的な推移を調べることができ、炎上の予測や発生源の特定を行う際にも有効なツールです。
このテーマを選んだ理由は、自分が苦しい時に元気をもらっているアーティストがネット上の誹謗中傷・デマの問題で苦しんでいたからです。いつも笑顔で元気なパフォーマンスを披露する彼女らが悲しげな表情をしている様子にひどくショックを受けました。技術の発展により発生したこのような問題は、同じく技術を用いることで解決できるのではないか?その考えがテーマ選択の原点となっています。

03応募前から無事修了を迎えるまでの約1年間はどんな日々でしたか?
応募しようと決断してからは全力で課題に取り組みました。合格通知をいただいてSecHack365が始まった7月から10月はとにかく色々試し、それと同時にコースワークで思索を深めました。中間発表の際にはかなり厳しい状況で、周りにも自分のやりたいことがなかなか伝わらず悔しかったです。
その後は視野を広げることを意識し、トレーニーやトレーナー、アシスタントの方と話して様々なアイディアを吸収しました。12月下旬にはようやく打開できそうな兆しが見えてきました。
しかし、卒業論文の執筆と学会に投稿する論文作成、そしてSecHack365の成果発表会と3つのタスクの締め切りが全て1月だったため、この期間はこの上なく多忙でした。
そんな一年間でしたが、今こうして振り返ってみると懐かしく感じられます。

04SecHack365で得られたことはどんなことですか?
1つは「とにかくやってみる!」ということです。
当初は最新の深層学習モデルを利用して文章を分類し、その中から攻撃的な表現をピックアップするという手法で実験を行っていましたが、良い結果は得られませんでした。今までのやり方を勇気を出して捨てて別の手法を試してみたところ、良い結果を得ることができました。
もう1つは相手にわかりやすく伝えることです。
スライドやポスターなどは何度もチェックしていただいたことで、相手に伝えるためのコツが少しづつわかってきました。海外のカンファレンスで発表を行う機会にも恵まれましたが、世界中の人に伝える際にもこの期間で学んだことを大きく活かすことができたと思います。

05今後やりたいことや目標はありますか?
SecHack365修了は自分にとって作品を完成させたという一つの通過点です。今後は実際にこのツールを必要としている人に使用していただき、その効果を確認してより価値のあるツールへとなるようにチューニングしてゆこうと考えています。目標は多くの人がこのツールを活用し、ネット上の悪意のある投稿が引き起こす悲しい出来事を一つでも減らせる世界の実現です。
また、セキュリティ分野で脆弱性をより見つけやすくする方法を模索しようと考えています。SecHack365に参加することで様々なセキュリティ関連の技術や手法に触れることができました。その経験を活かして今後活動していく予定です。

06SecHack365の応募を検討されている方にメッセージをお願いします
自分の取り組むテーマに対して1年間という長い期間でかつ、これ以上没頭できる環境は他にはないです。そして他のトレーニーやトレーナーとの交流により、時に予想していなかった方向に進んでいくのがとても楽しいです。SecHack365に参加したことで得られた経験がいくつもあります。
応募を迷っている方はとりあえず課題をやってみましょう!そして提出してみましょう!全てはそこから始まります。ただし卒論や修論のテーマとは異なるテーマでSecHack365に取り組もうと考えている方、僕のように全く異なったものを選択して2つとも両立させることは大変なのでそこだけは覚悟してください。

学習駆動コース 優秀修了生竹田 大将さんHiromasa Takeda

あなたにとっての「SecHack365」を一言で言うと?
「好き/夢 を認める・磨く・もう一歩進める そんな場所」
SecHack365はやりたいことを尊重してくれます。 意義があるのか、成功するのか、金になるのか、と言われがちな夢でもSecHack365は"認めて"くれます。 かといって、野放しにされ本能的にものづくりするわけはありません。 夢をより多くの人が幸せになるようなプロダクトに"磨いてくれる"プロ集団がいます。 やりたいことがピンときていない人でも、"好きなこと"をSecHack365は尊重し、世の中に"好き"を広められるよう磨きをかけてくれるでしょう。 どちらにせよ、それが強制される"取り組み"ではなく、"もう一歩進める"チャンスが偏在する"場所"であると思っての一言です。

01優秀修了生に選ばれた感想を聴かせてください。
参加中は公言こそしていませんでしたが、元々参加した時点から優秀修了に選ばれることを目標としていました。
トレーナーともその目標を共有し作品を磨いていたため、選んでいただいた時には素直に嬉しさを感じたのはもちろん、宣言通りの目標達成ができたことによる大きな自信がつきました。
結論としては「この自信をもとに、新たなチャレンジをしていこう」と思ったのが優秀修了生に選ばれた感想ですね。

02どんな作品を作りましたか?なぜその作品を作ろうと思いましたか?
「iGenc:SoC内GPUを用いたユーザエクスペリエンスを低下させない暗号処理機構」と、なんとも長ったらしいタイトルで内蔵GPUリソースを活用する暗号処理機構を作っています。(現在進行形)
作ろうと思ったきっかけは「内蔵GPUは普段使いのPC環境では空きリソースであることが多くもったいない」「ディスク暗号化をするとCPU負荷が高まりPC全体の動作がもっさりするのが嫌だった」などいくつかあるのですが、一番コアなモチベーションは「活用や研究が少なく、自分にとっては謎が多い内蔵GPUを知りたかった・使ってみたかった」という知的好奇心です。この知的好奇心だけの作品が受け入れられ磨かれたのは、研究でも仕事でもないSecHack365だからこそだったと思います。

03応募前から無事修了を迎えるまでの約1年間はどんな日々でしたか?
自分は大学院生で、定期的に研究や仕事の進捗を求められる生活をしているため、SecHack365での作品作りがうまく進まなかったり、いい結果が出なかったり、そもそも手をつけたくないような期間はなんとも後ろめたい気持ちになり、序盤は苦悩しました。
しかし、そんなことで責められるような場所・空気ではないことを徐々に理解し、自分の作品が行き詰まっている時は他の作品の進捗を見て刺激をもらったり、他愛もない雑談や技術的な議論を活発に行いながら自分のモチベーションを高める。そして自分が楽しいと感じるときに一気に作る。そんなことを繰り返しながら、ものづくりの本来の楽しさを思い出した一年でした。

04SecHack365で得られたことはどんなことですか?
これは執筆段階での予想ですが、インタビューを受けている多くの人はこう答えるのではないでしょうか「人の繋がりである」と。
実際、そのような回答がなかったとしてもみんなそう感じているはずです!
私も同じく、1年という長期間の取り組みだからこそ形成された密な人の繋がりがSecHack365で得られた大きなことだと思います。

05今後やりたいことや目標はありますか?
もちろん作品を作り続け、多くの人に使ってもらえることを直近の目標としています。
使ってもらえなくても、研究として知見を残し今後の社会の発展に意地でも寄与してやろうと思います。
また、もう一つ目標があります。
今回得られた密な人の繋がりを生かし、様々なITコミュニティ・取り組みを地元である岩手、東北に引っ張ってくることです。
今回SecHack365はオンラインだったのでまだよかったですが、未だ都市部だけに機会が集中している現状をどうにかしようと思っています。

06SecHack365の応募を検討されている方にメッセージをお願いします
例年の修了生インタビューで言われている通り「応募はタダ!まず応募しよう!」に尽きます。
もう一つアドバイスするとすれば、学校・会社・友人など周りを巻き込んでみんなで応募してください。
別に「団体で採用されよう!」と推しているのではなく、こうすることできっとあなたの周りには人が集まり、情報が集まり、学びやすい環境になるからです。
「これに応募します!」「一緒に応募しない?」と発信することで、あなたが何に興味を持っているのか、SecHack365という有用な環境があること、これがあなたの周りに広まりあなたの元には同じ志を持った人が集まるでしょう。情報は発信した人に集まります。エゴサを楽しみにしています。

研究駆動コース 優秀修了生野村 和也さんKazuya Nomura

あなたにとっての「SecHack365」を一言で言うと?
「好きなだけやりたいことをやれる環境」
恩師に「学生の特権なので好きなだけ勉強してください」という言葉をいただいたことがあるのですが、まさにSecHack365では好きなだけやりたいことをやれる環境を作っていただいたと思っています。特にトレーニーは選考を勝ち抜いた猛者ですし、トレーナー陣はサイバーセキュリティの各分野で最前線を突っ走ってる方々です。自分の成果物だけではなく、様々な小ネタでも、他ではできないほど(好き放題に)突き抜けて深い探究ができたと思います。

01優秀修了生に選ばれた感想を聴かせてください。
全国から猛者が集う中でどこまでの成果を出せるか不安だったのですが、優秀修了という形で評価していただきとても嬉しかったです。実は最初に「家族や友人にも自慢できるような成果を出す」という目標を立てたのですが、優秀修了という形で一つ誇れる成果が出せたのではないかと思います。初めて発表された日はとても嬉しかったので、とりあえずそこにいた飼い犬に自慢しました。

02どんな作品を作りましたか?なぜその作品を作ろうと思いましたか?
大学でマルウェア検知・分類の研究をしており、その「答え合わせ」に「VirusTotal」という複数のアンチウイルスでマルウェアの検出ができるサービスを使っていました。しかし、本当にVirusTotalの結果を盲目的に信じていいのか不安に思っていました。そこで、VirusTotalの検出結果を4ヶ月間いろいろなマルウェアに対して取得し続け、様々な傾向と対策を見つけました。さらに、その知見を生かしてツールを開発しました。

03応募前から無事修了を迎えるまでの約1年間はどんな日々でしたか?
修士2年だったこともあり、大学で行っている別の研究も大詰めを迎える時期でした。さらに他にも個人で取り組んでいることがあり、結構忙しい日々を過ごしました。しかし、結果的には「大学の研究が辛くなったらSecHack365」、SecHack365が辛くなったら大学の研究」、「両方辛くなったら自分の趣味」というような、お互いいい刺激になる相乗効果が得られたと思います。一方、実際に作業に費やせた時間はおそらく他の方より短かかったのですが、その分アイデアだけはいつでも拾えるように心掛けていました。例えば、私の成果では「曖昧さ」の評価にエントロピーを用いるのですが、そのアイデアはゼミの有志で行っている情報理論の勉強会で得ました。

04SecHack365で得られたことはどんなことですか?
今年度のSecHack365のポスターに「(サイバーセキュリティで)世界を変えよう」という言葉が書いてあったのを思い出します。正直他の人の世界を変えるにはまだ程遠いのですが、少なくとも自分の世界は大きく変わりました。特に、全国でサイバーセキュリティをやっている仲間と知り合えたのは大きいと思っています。また、「迷ったら作ってみる」、「作ったら恐れず公開してみる」ということの意義を実感しました。さらに、今春からはサイバーセキュリティ関係の職に就くのですが、そのための自信がちょっとついた気がします。

05今後やりたいことや目標はありますか?
SecHack365で得た経験をきっかけにして、継続して何かを創って発信し続けたいです。いずれは革新的な発明をして、他の人の世界も変えられるようなモノ作りができたらいいなと考えています。何十年かかってもできるかわかりませんが…。あとは全然関係ないですが世界進出したいです(何?)

06SecHack365の応募を検討されている方にメッセージをお願いします
応募しても参加できるとは限らないため、応募を迷ってるくらいなら応募した方が良いです。自分は応募時に受かる自信は全然なく、後先考えずに面白そうだから受かったらラッキーくらいの感じで応募し、怒涛の一年間を過ごしました。自分が作りたいもののイメージを持っておくことは大切です、しかし、「時間が足りるのだろうか」とか「ついて行けるのだろうか」など、受かった後のことは受かってから考えても大体何とかなります。また、「楽しそうだし興味あるけど、サイバーセキュリティ全然やってないしなぁ」という人も多いと思うのですが、とりあえず自分の好きなものを作っていれば、何らかの形でセキュリティ要素も必要になるはずです。

研究駆動コース 優秀修了生野本 一輝さんKazuki Nomoto

あなたにとっての「SecHack365」を一言で言うと?
「習慣化 x 進捗 x セキュリティ」

01優秀修了生に選ばれた感想を聴かせてください。
優秀修了生に選ばれて嬉しかったです。私は、研究駆動コースだったということもあり、他コースと比較して「成果」の出方が異なる点を少し危惧しておりました。明確なモノやサービス でなくても、論文や社会への還元が評価されたことが嬉しかったです。

02どんな作品を作りましたか?なぜその作品を作ろうと思いましたか?
私は接触確認アプリに着目しました。接触確認アプリにおいて、偽の濃厚接触通知が引き起こされる偽濃厚接触攻撃と陽性者が第三者により特定される陽性者特定攻撃という2つの攻撃を提案し、評価しました。それらの成果を論文やポスターにまとめ、国内学会や国際学会で発表しました。さらに発見したセキュリティ上の問題を関係機関に報告しました。研究テーマとして、実社会に影響をもたらし、本当に役立つことをやりたいと思いました。接触確認アプリであれば、影響も大きく、社会に大きく貢献できると考え、テーマとして選択しました。

03応募前から無事修了を迎えるまでの約1年間はどんな日々でしたか?
ひたすら濃密な1年間でした。私はSecHack365内のトレーナーやトレーニーの全員が見られるところに「毎日進捗報告をする」ということを続けてみました。そういった進捗報告を行うことで、サボれなくなり、自分の中でも1日の振り返りや次の日にやることを明確にすることができて、着々と成果を出すことができました。また、研究駆動コースでは毎週のゼミでトレーナーや他のトレーニーと議論を行う機会がありました。毎週の議論を通して、スピード感をもって、進捗を作り出せました。苦労したことは、やはりSecHack365時間を絞り出すことが大変でした。週に何回かはSecHack365関連で集まることがあったため、その調整に苦労しました。

04SecHack365で得られたことはどんなことですか?
SecHack365では、主に2つのことを学ぶことができました。1つめは習慣化です。SecHack365をやるとなると、大学の学業やプライベートとの両立が必要になります。そのため、無理矢理SecHack365時間を作ろうとしても無茶が生まれることがあります。そこで、習慣化がとても役に立ちました。やるべきことを習慣として定着させることで、やるべきことを当たり前にこなせるようになりました。2つめは、とりあえずやってみよう! ということを学びました。SecHack365では、失敗することを恐れてやらないより、とりあえずやってみよう! 出る杭は得する! という雰囲気があります。私はトレーニーを囲む会や忘年会の企画など、とりあえずやってみよう と思ってやったことが結果的に他のトレーニーを知ることができ、仲良くなれる良い機会になりました。

05今後やりたいことや目標はありますか?
まずは、SecHack365で取り組んだ接触確認アプリのセキュリティやプライバシーについての研究を続け、さらに成果を出したいです。さらに異なるテーマでも、研究を行い、SecHack365で学ぶことのできた研究のプロセスを活かしたいです。研究以外でも、セキュリティに関する情報発信や開発をしていきたいです。また、習慣化は今後もずっと続けます。

06SecHack365の応募を検討されている方にメッセージをお願いします
これを読んでいるということは、もうすでにSecHack365に応募するか検討しているのでしょう。その時点で、応募しないという選択肢はどこにもないですよ!?笑。少しでも興味を持ったことにはどんどんトライしてみることをおすすめします!

コースマスターからのひとこと

表現駆動コース
今 佑輔
  • 佐藤 公信
---2020年度の表現駆動コースはいかがでしたか?

枠に囚われずに、身近な問題を解決するため、想像力を働かせてサービスを創り出せていたと思います。 フルオンラインになり、ここに何かギャップ、壁みたいなものを感じましたね。

---オンラインの壁ということですか。

ニューラルネットワークの産業応用が専門なのですが、深層学習になって何が変わったかというと、特徴抽出、つまり、次元圧縮をしなくて良くなったんです。

---ほう。

無加工のデータを入力して、処理させた方がいい。

---生データ主義ですか。

ビデオチャットソフトを通して、次元が圧縮されているのを感じるんですよね。ソフトによって、処理アルゴリズムが違うでしょうから、伝わり方に影響があるかもね。
つまり、バイアスですかね。
バイアスといえば。
マリア・コニコヴァさんという心理学者の方が、シャーロックホームズの思考方法について現代科学で読み解いく、シャーロック・ホームズの思考術という本があって。これがおもしろくて。
引用すると、
“私たちの脳波、初期設定の答えが常に「正」である正誤式の問題のように、最初に世界を見てしまっている。この「正」の状態のままでいるのに何の苦労もないため、「誤」へ変えようとすると、警戒のための時間とエネルギーを要するのだ“

---つまり?

外からのインプットがバイアスになることを意識し、自分の想像力を信じて、世界をより良い方向に向かわせて欲しいということですかね。

---そういうことですか。

表現駆動コースでは、遊び場のような枠かな、真っ新な、を、創っているようなものなんですね。そこにどんな興味深いものを持ち込みどう遊ぶかはトレーニーのみなさん次第。

---そんなポリシーだったんですね。最後に何かありますか?

修了生のみなさんには、何が正しいのか、自分自身のバイアスを認識して、しっかりと考える習慣を身につけ、これからの道なき道を切り開いていってもらいたいですね。

学習駆動コース
今 佑輔
  • 坂井 弘亮
まずはSecHack365での作品づくり,おつかれさまでした.

学習駆動コースのコンセプトは,作りたいものを作っていく中で,付加的に何かの勉強を行うことで,作っているものに対して何らかの新しいアイディアなどを追加できればいいよね!というものでした.つまり作品作りというアウトプットは重要なのですがそれだけでなく,自身に対するインプットもしてみるという欲張りなものです.

さて実際に何かしらのアイディアは出たでしょうか,どうでしたでしょうか.

まあもともとそれによって新しいアイディアが出るかどうか,学習したことが実際に役に立ったかどうかというのは偶然的要素が強いので,たとえ出なかったとしてもそれはそれで良いです.何かを学習するというのは,そういうものですので.

でもそのインプットは,おそらく自身に対しての資産にはなっているので,いずれどこかで役に立つこともあるかもしれません.

修了後は,学習したことをいかにして役に立てるかのアイディアを考える,というアイディア出しをぜひ,やってみてください.学んだそれが役に立つのを待っているだけでなく,学んだそれを役に立てる方法を自分で考える,ということです.学ぶときは役立つかどうかは意識せず興味本位でやるのがいいのですが,学んだ後にその知識をいかにして役立てるかを考えるのは,自分です.いや考え付かなくてもいいんだけど,それを思いつけると楽しいです.

そういう考える習慣がつくと,学習することも楽しくなってきます.今は役に立たなそうでも,いずれ役に立つように自分「が」できると思えるようになるからです.

開発駆動コース
今 佑輔
  • 川合 秀実

2020年度のSecHack365はオンライン開催になりました。そのことを残念がる意見はとてもたくさん目にしました。
私だって残念に思います。しかし本来ソフトウェア開発は直接会えなくても十分に可能なはずです。私はオープンソース開発を長らくやってきて、たくさんの人から極めて有益なアドバイスをもらってきました。しかしその中の半数くらいの人とはいまだに顔を合わせたことがなく、年齢も性別も顔も声も何も分かりません。でもそれが不便だとは感じていませんでしたし、感謝の念がみじんも薄れたりはしません。

もちろん、直接会えたほうが指導はしやすいです。でも無理なものは無理なんです。そんなとき、無理なものを嘆くだけでは何も解決しないので、私はそこにはこだわりません。むしろこの状況を利用して、何か例年よりも面白いことはできないだろうかとそんなことばかり考えていました。今しかできないことは何かないか、みたいに。
結果的には大したことはできなかったのですが、しかし挑戦した自分は自分なりのベストを尽くせたと感じています。

ということで今回の私からのメッセージは、状況や環境が思わしくないときも、どうかくさらず、その状況を逆に利用してやろうと思うくらいの「ひねくれもの」の心を持ってください、ということです。もちろん、それでうまくいくときもいかないときもありますが、とにかくただ多くの人と同じように考えているだけでは何も始まらないのです。

思索駆動コース
柏崎 礼生
  • 柏崎 礼生

安楽椅子探偵というミステリ用語があります。ある事件の解決に際し、能動的な情報収集をすることなく、当人以外の登場人物からもたらされる情報のみをもとに推理を巡らし解決へと導く探偵、もしくはそのような解決を描く作品を指します。思索駆動コースマスターは常々そうありたいものだと思っておりますし、事実トレーニーのみなさまは「あのコースマスターは何もやってくれなかったな」と思っておられることでしょう。

思索駆動のコースマスターとして最大の栄誉は、トレーニーの皆様が好き好んで自ら抱えてやってきた問題と対峙し、思索して懊悩して、かりそめであれなにがしか一つの一時的な解決へと「独力で」導いたという高揚と達成感を得ること、このことに他なりません。僕よりもよほど社会性に富むトレーニーが社交辞令的な感謝の言葉を述べて下さいましたが、僕は「クソいまいましい」と腹の底で思っていたことをここで告白させて頂きます。

例年であれば最終成果報告会で思索駆動トレーニーに述べるべきことを、今年はそのタイミングを逸してしまったので、ここで述べさせていただきます。思索駆動コースのトレーニーのみなさまは無事修了証を受け取り、SecHack365を修了されたことと存じ上げます。これから皆様はセキュリティイノベーターとしてさらなる活躍を期待されているらしいですが、5年後にあなたがこの修了成果物の延長線上を歩いていたら僕はあなたを軽蔑します。

僕が切望することは、火星の一共和国かと思えるほど遠い、見知らぬ場所で、驚くほどに異なる仕事をしているあなたに偶然出会うことです。そこであなたはSecHack365のことなどすっかり忘れているのに、相も変わらず日常に遍在する違和感を無視することなく戦い続けてゐる。その変わらぬあなたの中に、思索駆動で培われた何かを見出そうとすることは、僕が唾棄する「安易な因果に飛びつく行為」に他ならないのですが、そんな老醜を晒す僕をどうか嘲笑して下さい。

研究駆動コース
猪俣 敦夫
  • 猪俣 敦夫

SecHack365では一番若いコースでありつつも、研究トレーナーたちは何か怖い、厳しい、という全国からのお便りを聞いたり聞かなかったりもしますが、先に言っておきましょう、全員本当はとても優しいです、そして暑苦しいぐらいに情熱が熱いです、だからこそ安易な妥協で終わらせません、それがどうやら外からは厳しく見えてしまうようです。

戻しますが、SecHack365でやるべき研究とは何なのか、と自問自答しながら手探りで進めてきた2年、その本当の答えはまだ見つかっていませんが、優秀なトレーニーたちのおかげで突っ走ることはできました。1年目はアカデミアでの研究という目線から離れられず彼らに悔しい思いをさせてしまいました。これを私の大きな反省として、持ち寄ったテーマをじっくり精査し、技術のみならず社会にも意義ないし価値あるテーマに育てるには何が必要かという視点で、皆でじっくり考えていくスタイルに変えました。今さらですが2020は現代の人類が誰も経験したことない禍の年となったわけです。いずれ対面でできるかもしれない、などとそんな甘い話ではないことをすぐに知ることになりました。オンラインだけで成果なんて出るのだろうかとその実施そのものに葛藤を覚えることもありましたが、そうした中で受け入れた5名、忘れられないのがオンラインでの初顔合わせでした。「今年のトレーニーたちもすごいぞ」

心配など杞憂そのもの、それぞれ個性の強い5人(トレーナーもありえなくキャラ濃いですが)が集まりました。SecHackは学校ではない、皆んな研究したくて集まってきた場所なんだと、いずれのテーマも世界に十分チャレンジできる内容でありそれを聞かせてもらえる私たちたちも(クールを装いつつ)ゾクゾクしながらの時間でした。最後に、皆さんに会いたかったというのが本音ではありますがそんな気持ちもオンラインならではの喜びと感じつつ、5人の皆さんに出会えたことがとても幸せでした、本当にありがとう。

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