SecHack365 2023 / 5th Event WeekReport 5th Event Week

第5回イベント(1月27日・28日)

27th

Nov
28th

Nov
01
発表・囲み
02
講義 習慣化 佳山トレーナー
03
放課後
01
講演 「必要とされるモノを作り、届ける技術」
02
発表・囲み
03
講義 法律と倫理 北条トレーナー
04
放課後
2ヶ月ぶりとなるSecHack365の第5回イベントが、1月27日(土)・28日(日)の両日にオンラインで開催されました。今回は2日間にかけて、トレーニーたちが思い思いに作成したビデオを視聴していきます。SecHack365も、このイベントを過ぎると、3月の第6回イベント&成果発表会を残すのみ。いわば「最終コーナー」、あるいは「ゴールに向けてリーチが掛かった」とも言える状態です。それだけではなく、今回のビデオ発表は、進捗を共有するだけでなく、「今年の優秀修了生を決定する」という重要なものでもあります。評価に関わるトレーナーたちも、いっそうの覚悟を持ってイベントに臨みます。

いつものように横山トレーナーの挨拶で、イベントが始まりました。緊張するトレーニーたちに向けて「発表では1つのことを伝えると40倍になって返ってくる。それだけのレスポンスを得られる貴重な機会なので、ぜひ発表をする側も楽しんでほしい」とエールを送ります。5月のプレイベントから約8ヶ月、今まで繰り返してきた発表とそれに対する数々のレビューによって、トレーニーたちのプロダクトはだんだんと形になってきました。今回のビデオ発表では、それらのプロダクトの魅力を私たちにどのように伝えてくれるのでしょうか? レポートしていきます。

社会実装に近づけるため−ビデオ発表

今回は、1人(表現駆動コースは1グループ)15分と決められた中でビデオ発表を行いました。1つのテーマについて解説をするにあたって、15分はそれなりの長さがあります。実際に、第3回イベントで行った発表の3倍の時間です。ただ、時間が多くあるからといって、あれもこれも伝えてしまうと、受け手は情報過多になって、結局何を作っているのかわからない発表になってしまうことになりかねません。興味を持って発表を聞いてもらうには、どんな人が自分の発表を聞くのかを意識し、噛み砕いた解説を加えたり、デモ動画を取り入れたりする努力が大切です。

もちろん、トレーニーによって伝える内容はさまざまです。単純に技術的な内容を解説するだけではなく、社会課題の解決にどのように役立つのか説明する人、SecHack365期間中の自分の心の変化を伝える人もいました。

ラストスパートに向けた習慣化

2日にわたって行われたビデオ発表。その途中には習慣化の講義も行われました。「箸休め的に聞いてほしい」と断りを入れた佳山トレーナーが、過去4回の講義を振り返ります。

習慣化への向き合い方について、「息をするようにできるように」「少しだけでも動いてみるのが大事」と語る佳山トレーナー。習慣化の効果は、トレーニーたちの開発にしっかりと現れているようです。ビデオ発表では、メモを取ることを習慣にしていたところ、そのメモを見返したことで開発のアイデアにつながったと語るトレーニーもいました。

講義では「マンダラート」や「計画的偶発性理論」など、今まで登場したキーワードがどんどん出てきます。実は、第1回イベントで作成したマンダラートは、単に作って終わりではなく、その後も日々成長していくべきものだと、佳山トレーナーは語ります。実際に、多くのトレーニーのマンダラートは達成した項目や重要度によって色分けしたり、書き込んだ内容を更新したり、はたまた自分がクリアできているか確認できるようにチェック項目を設けたり、それぞれ独自に発展を遂げていました。

トレーニーたちの習慣化への取り組みを紹介した佳山トレーナーは、最後に「何か心に刺さった人がいれば、それは習慣化ができていないことに気づけたからかもしれない」と指摘。ただ、それは決して悪いことではなく、今すぐにでも始めることが大切だと語ります。今回の講義がトレーニーたちに刺激を与え、最後のイベントまで習慣化を意識して走り切ることができるでしょう。

改めてものづくりを考える

「皆さん、ものづくりしていますか?」とトレーニーたちに問いかけたのは、SecHack365で、実行委員を務める井手康貴氏です。委員として、イベント運営に関するアドバイスやトレーニーの成果物を通した事業への評価を行なっています。そんな井手氏の本業は、セキュリティを扱う株式会社Flatt Security の代表取締役CEO。同社では、SecHack365の修了生も活躍しているといいます。今回は「必要とされるモノを作り、届ける技術」というテーマで、講義を行いました。

井手氏は、ものづくりは難しいことだと語ります。例えば現在、さまざまな機関でビジネスコンテストが開催されていますが、その多くでは、どんな「アイデア」を出すかを重視する一方で、その後のより難易度が高いとされる「ものづくり」や「社会実装」についてはあまり考慮されていないといいます。ちなみに誰かに使ってもらうことの難しさについては、第4回イベントで修了生の桑原 翼さんも指摘していました。

今回、井手氏は、多くの人に使われるサービスを作るのに必要な3ステップを紹介しました。

まずは、「ペルソナ」を設定すること。トレーニーたちの開発もいよいよ終盤に近づいてきましたが、自分の開発したプロダクトを使うと想定するペルソナを言語化するのは難しいようで、チャットツール上で汗マークを出す人もいました。曖昧なペルソナを設定すると、誰にも刺さらない中途半端なサービスになってしまうので、個人の顔が思い浮かぶくらい詳細に設定すると良いと語ります。「そんなに限定してしまっては、その1人にしか使われないのではないか......?」という心配は必要ない。誰かに刺さるものは、他の人にも刺さることが多い。まずは万人受けを狙わず、設定したペルソナにしっかり刺さるものを作ろう――と井手氏はアドバイスしていました。

次に、何を「本当に」必要としているのかを理解すること。サービスが世の中で広く使われるには、それが「なくてはならないもの」であることが重要です。しかし気づいたら「あれば嬉しいもの」になってしまうこともしばしば。「なくてはならない」サービスを作るためには、「1. ペルソナと、ペルソナの持つペインに関する仮説を立てる」「2. ユーザーインタビューを行う」「3. ペインを解決できるようなMVPを作成する」「4. 実際に使ってもらう」「5. ダメだったら1に戻る」というPDCA検証サイクルを組み立てる必要があると語ります。またその中でもユーザインタビューには注意が必要で、プロトタイプを見せて、これが欲しいか聞くのは御法度。ユーザーは自身のペインについて無自覚であり、本当に解決したいものについては、ある程度の解決手段を持っているといいます。つまり、「欲しい」と言ってくれたとしても、それにお金を払うかは別なのです。最初から何かすごいものを作ろうとするのではなく、ユーザの持つ無自覚なペインを解決できるようなMVP(Minimum Viable Product: ユーザに必要最小限の価値を提供できるプロダクト)を作成し、PDCA検証サイクルを速く何度も行うことで、精度を高めていくのが大切だといいます。

最後は、必要としてくれている人にモノを「届ける」こと。今は「広告を打つ」「マーケティング専門家に任せる」など、お金をかければ誰でもプロダクトをユーザに届けることができます。しかし、それができるのは資本力のある企業に限られます。井手氏は、自分のプロダクトに関心を持ってもらえそうな人に共通しそうな行動パターンや、その他の関心事について想像するなど、仮説を立て、実行するといった試行錯誤を繰り返していくといいと語ります。SecHack365を通して自分のプロダクトの魅力を伝える練習をしてきたトレーニーたちは、3月の成果発表会では、外部の一般ユーザに向けてもアピールしなくてはいけません。今回の講義が非常に参考になったのではないでしょうか。

ものづくりにおいて大切なことがたくさん詰まった講義が終わると、トレーニーたちからも次々に質問が寄せられました。それらの質問に対して、井手氏はフリマアプリを例に答えていきます。例えば、ユーザインタビューで何を聞けばいいのかという疑問には、「不用品を売るとき困っていること」ではなく、「どうやって売買を行なっているか」を聞くことで、非効率な点が見えてくるといいます。また、小さい(ミニマム)悩みがいくつもある場合は、どれからクリアしていくべきかという質問には、出品作業を簡単にするなど、一番コアとなる部分から解決していくと、ユーザを取り込むことができ、ビジネスの優劣の決め手になるかもしれないと回答します。改めて、PDCA検証サイクルを早く回す必要性に言及しました。

改めてものづくりを考える

その後、北條トレーナーの講義では、著作権を扱いました。今回のビデオ発表では、フリー画像を使うトレーニーもいましたが、そこで気をつけなくてはいけないのが、画像の著作権の有無です。近年、教育関係者が配布物などに使用した画像が、実は著作権を侵害しており、賠償金を払うことに......といったことが実際にしばしば起きています。それらの多くに共通するのは、侵害した側が、使った画像を「フリー画像」だと認識していたこと。ファスト映画など、悪意を持ったものだけでなく、単に「ちゃんと注意を払わなかったこと」が犯罪に結びついてしまうことがあるのです。トレーニーたちも、今後の発表では、より気をつけていかなければならないと、改めて感じたのではないでしょうか。

ビデオ発表を中心に行った第5回イベントもあっという間にエンディングです。次回3月1日(金)に行われる第6回イベントは今年度最後の公式イベントとなります。そして、翌日の2日(土)には、一般の人も訪れる成果発表会が行われます。約1年間続けてきた開発の成果を思い切り伝える大切な機会です。それまでの約1ヶ月間の間に、どれだけのラストスパートがかけられるのか。ゴールに向けてのトレーニーたちの頑張りに注目です。

放課後には、ビデオ発表を受けて優秀修了生の選考が行われました。今回のイベントの終了にあたって、横山トレーナーにお話を伺いました。

――今回のビデオ発表はいかがでしたか?
「去年よりも全体的に絶対レベルが上がっていると思います。特に表現の面では、動画を使うとか、派手なものが増えて、表現力がすごく豊かになったと感じました」

開発の中身だけではなく、伝え方についてもトレーニーたちはしっかり考えたようです。実は今回、横山トレーナーはすべての発表にコメントをしていました。実装はどれほど進んでいるのか、誰かに使ってもらったことはあるのかといった質問です。

――横山トレーナーからは、社会実装に関する質問を何度も出されていましたね。
「そうですね。プロダクトと社会とのつながりは強く意識しています。ただ、世の中の役に立たないから、止めさせるというのは違うと考えていて、独特なアイデアやプロダクトは大切にしたいと思っています。その上で、『これじゃダメだな』って課題を見つけた人には、前向きな気持ちで、もう1回最初の部分まで立ち返ってもらいたいと考えています」

――いよいよ、イベントも残り1回となりました。これだけ長期間、トレーニーとトレーナーが伴走するSecHack365の価値とは、どのようなものでしょうか?
「僕たちが与えられる最大の価値は、トレーニーの皆が考え、開発するものに対して、その都度レビューをしていくことです。SecHack365のトレーナーは、発表に対してコメントするスタイルが定着しています。その点については、他のプログラムよりも密にできていると思います。もしかしたら、若い人には優秀者に賞金が与えられるコンテスト形式のほうが喜ばれるのかもしれません。でも、トレーニーたちが『レビューを受けてこんなに成長したんだよ』『作品もこんなに良くなったんだよ』といった経験をすることで、SecHack365の持つ価値を感じてもらいたいと思っています。それが読者の皆様にも伝われば嬉しいです」

アシスタントの感想

吉田 美咲さん(2022年度修了生)
吉田 美咲さん
(2022年度修了生)
担当コース:思索駆動コース

第5回のイベントお疲れ様でした!
今回は内部での成果発表会をオンラインで行いました。
約1年間取り組んできた内容・開発物について、事前に作成した動画やスライドで各自説明を行い、質疑応答を経て優秀修了生を決定しました。
1年間の取組みを振り返る中で、満足してやり切ったと思う方もいるかもしれませんが、もう少しこの部分はこうしたかったなど悔いが残った方も多いと思います。
ただ、そのように感じる経験自体とても尊いものだと私は思っているので、悔しいと感じたその気持ちを忘れずに今後に活かしてほしいです。
最後の成果発表会まであと少しですが、みなさんが自分自身で満足できるような成果を作り出せるよう、アシスタント一同サポートします!

第5回のイベントお疲れ様でした!
今回は内部での成果発表会をオンラインで行いました。
約1年間取り組んできた内容・開発物について、事前に作成した動画やスライドで各自説明を行い、質疑応答を経て優秀修了生を決定しました。
1年間の取組みを振り返る中で、満足してやり切ったと思う方もいるかもしれませんが、もう少しこの部分はこうしたかったなど悔いが残った方も多いと思います。
ただ、そのように感じる経験自体とても尊いものだと私は思っているので、悔しいと感じたその気持ちを忘れずに今後に活かしてほしいです。
最後の成果発表会まであと少しですが、みなさんが自分自身で満足できるような成果を作り出せるよう、アシスタント一同サポートします!

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