SecHack365 2023 / 4th Event WeekReport 4th Event Week

第4回イベント(11月17日~19日)

17th

Nov
18th

Nov
19th

Nov
01
講演 よりよい協創関係を構築していくために
02
展示ツッコミ会1~4
03
コースワーク・放課後
01
ゲスト修了生講演
02
トレーナー縁日1
03
講義 法律と倫理
04
トレーナー縁日2
05
コミュニティトラック
06
放課後
01
コースワーク
02
講義 習慣化
03
トレーニーグループでのSH365活動への交流・相談・議論
4ヶ月ぶりのオフラインイベントが11月17日(金)から19日(日)の3日間、大阪のオービックホールで開催されました。雲に覆われていた空も、全国からトレーニーを迎える頃には青空が広がりました。第4回イベントの目的は、活動の共有と残すところあと2回となる次のイベントにつなげること。新型コロナウイルス流行後初の東京以外での開催となる今回は、1日目はポスター発表を中心としたアウトプット、2・3日目は講演を中心としたインプットが行われます。

内容も盛りだくさんで、イベントには大阪開催ならではの魅力を生かし、地元の企業・団体も多数参加しました。オフラインだからこそ、リアルタイムでさまざまな人からアドバイスを得ることができるこの機会に多くの期待が寄せられ、参加者たちも胸を踊らせました。果たして、どのようなイベントになるのでしょうか?

1日目

お揃いのイベントウェアで結束強化

会場に集まったトレーニーたちは最初に受付でパーカーとトートバッグを受け取りました。オフラインイベントでは、毎回SecHack365のオリジナルウェアが用意されています。ちなみに、8月の第2回イベントではTシャツが配布されました。多くの参加者は2日目からは早速おそろいのウェアを着用し、これによって、さらに結束を高めるのです。

さらに、今回はイベントウェアと同時にトレーニー全員に各自の名前が刷られた名刺50枚も手渡されました。これは、前回のオフラインイベント後のアンケートで、「名刺があれば自己紹介などに便利だったはず」という声が多く寄せられていたことを受けたものです。名刺を添えて自分の活動内容を相手に伝えることで研究開発の内容と個人名の結びつきが明確になり、コミュニケーションがより活発になります。参加者たちはこれらのアイテムを身に着けながら、この3日間をより一層楽しむことになります。早速イベントの中身を見ていきましょう。

コミュニケーションの奥深さに迫る講演

私たちはコミュニケーションを十分にとれているのでしょうか? そんな疑問を解決するために、大阪成蹊大学の山崎哲弘准教授(経営学部経営学科)は1日目の最初のプログラムとして、「よりよい協創関係を構築していくために−コミュニケーションスキルを向上させるにはどうすればいいのか」というテーマで講演を行いました。

何かモノを作るときも、研究を進めるときも、自分一人だけで最初から最後まで済ますことができることは稀であり、通常は、いろいろな役割やスキルを持った人たちとの「協創関係」が重要になります。しかし、そのためには、「うまく伝える能力=コミュニケーションスキル」が欠かせません。
ただ実際には「伝わっているかどうか、そのことさえ私たちはよく分かっていないことが多い」――。この講演では、そんな、私たちの「自覚のなさ」を指摘します。

社会人にもよく見られるという分からないことへの無自覚。それを体験してもらおうと、山崎氏はトレーニーたち全員に白紙を配り、「文章だけで述べられたあるシーンを、絵に描き表してもらう」という簡単な実験を行いました。
「紙の右上の隅から左下の方に向けて、星が一つ落ちてきました」
「その星の下に1軒の家が建っています」
「その家には煙突があって、煙が上がっています」
「……」

6個ほどの内容に従って、トレーニーたちが絵を描いていきます。しかし、完成した絵はみんなバラバラです。この実験から分かるのは、私たちが普段、相手の言葉を理解しているつもりでいても、実際には、その「理解」の中身には隔たりがあるということです。どうしてもギャップは生まれてしまうものですが、そこにさらに「あいまいなまま、分かったつもり」が加わってしまうと、ギャップは広がるばかりです。指示を正確に理解できているかどうか、少しでも怪しいなら、きちんと聞き返すことの重要さを、ここから導き出すことができます。

講演では、相手と上手く付き合う方法についてさらに学びを深めました。たとえば、映画館に映画を見に行ったときに目の前に帽子を被った人が座っていたとします。あなたならどのように行動するでしょうか? 我慢するかもしれませんし、他の空いている席に移動するかもしれません。または、帽子が邪魔で映画が見えないと指摘するかもしれません。しかし、山崎氏によると、良いコミュニケーションを取るためには、相手を尊重しながら自分の意見や要望を伝える必要があり、「帽子を被っていますよね?」という客観的な事実を最初に述べるのがベストだそうです。私たちはどうしても自分の視点だけで物事を考えがちですが、客観的な事実(D:Describe)を述べた後に、自分の気持ち(E:Express)、具体的な提案(S:Specify)、選択肢や結果(C:Choose)を伝えることで、自分の考えを相手に正しく理解してもらえるといいます(DESC法)。

いよいよポスター展示

1日目のメインイベントとなるポスター展示では、トレーニーたちの研究・開発内容を一枚の紙に効果的にまとめるスキルが重要です。ポスターを制作する際は、文章だけでなく、図やグラフなど視覚的な要素を取り入れると、より分かりやすくなります。また、文字の大きさやフォントにも工夫を凝らし、色を使い分けることで情報が整理され、重要なポイントを引き立たせることもできます。今回使用したポスターはA1サイズ(594mm × 841mm)という大きさで、ポスターを見る人の視線の流れや見え方についても、考えておかなくてはなりません。

今回のポスター展示では、最初に2分間のライトニングトーク(LT)を行ったあと、別室に移動して7、8組のポスター展示を同時に行います。参加者は、興味のある展示の前で説明を聞いたり、アドバイスしたりして、約40分間を有効に使いました。ここでは、そのうちの3人をレポートします。

作品内容は第4回時点のものになります。
①宇治川 ひかるさん(思索駆動コース)

発表テーマ:「WALDEINSAMKEIT 〜あなたのそばに SA BEAUX〜」

宇治川さんは、精神的に不安定なときに行動を起こす難しさに気づき、その課題に対処するため、行動データを取得し、それを可視化するデバイスを提案しました。「Sa Beaux(サ・ボー)」と名付けられたこの植物の形をしたデバイスは、ウェアラブル端末が収集した睡眠時間、心拍数、歩数などのデータを、Wi-Fiを介してクラウドから自動的に取得し、色や形を変えることによって、ユーザの健康状態を可視化します。

宇治川さんは、心拍数に同調して葉を伸縮させたり、睡眠時間に応じてLEDケーブルの色を変化させたりするなど、収集したデータによってデバイスの動きや色を変えることで、ユーザに自身の健康状態を意識させ、より良い生活を送ることができると期待しています。

現在はまだアイデア段階ですが、今後Wear OS注1を利用したアプリ化を通じて、他の人にも試してもらって効果の計測を行いたいと述べています。また、SecHack365外に作品を持ち出して、自分の作品が社会にどのように評価されるのか試す社会実装支援にも応募したいといいます。

ちなみに、開発名称の「WALDEINSAMKEIT(森の中に1人でいる気分)」はドイツ語、デバイス名の「SA BEAUX」はフランス語風です。こんなふうに、「ちょっと耳慣れないけれど印象的」な言葉を交えることが、発表にアクセントを加えオシャレに見せている、という意見も、チャットツールでは多く見受けられました。また、宇治川さんはポスター発表の際、搭載してほしい機能や嬉しいと思うセンサーについて参加者からも意見を募り、それを付箋紙に書いて貼ってもらうという方法をとっていました。このアイデアは、2巡目のポスター発表から正式に採用され、希望する発表者に配られました。

注1
Googleが開発したスマートウォッチ向けOS。AndroidやiPhoneをBluetoothやWi-Fi、LTEとペアリングすることで、端末で受け取った通知をWear OS側で操作することができる。
②丸山 拓真さん(開発駆動コース 川合ゼミ)

発表テーマ:「タイムラインを活用したプログラムの動作を可視化する学習システムの開発」

動画編集の経験を持つ丸山さんは、編集作業で用いるタイムライン注2のように、時間軸を活用してプログラミングができる環境を提案しました。プログラミングの流れがつかめないという友人の悩みがきっかけで、このアイデアが浮かんだといいます。

提案されたシステムでは、画面上部に解析したいプログラムを挿入し、画面下部のタイムラインでプログラムの動作を可視化します。これにより、プログラミング初心者が学習するだけでなく、プログラムがうまく作動しない場合のデバッグにも役立つというのがこのシステムのメリットだといいます。

ポスターのデザインも見やすく、中心に位置する「タイムライン」が「概要」「可視化」「解決する問題」「解析」といった要素と繋がり、色分けも工夫されています。このデザインにより、内容を明瞭に伝えつつ、視覚的な印象も魅力的に表現されています。また、図にもそれぞれ解説が付されていることで内容も理解しやすくなっています。

注2
時間軸に沿って編集作業を行うエリアのこと。動画制作の場合、映像や音声、静止画などの素材の配置、トリミングや速さの変更、素材の移動や回転、拡大、縮小など、基本的な編集作業を行うことができる。時間に対応した視覚的な表現により、シーンの配置やタイミングの微調整を簡単に行うことができる。
③加藤 颯さん(開発駆動コース 仲山ゼミ)

発表テーマ:「hakolate 〜ブラウザから触れる開発環境」

加藤さんは、自分自身の経験から、コードを書き始めるまでのハードルが高いと感じています。現状では、外でプログラミングを行う際には、高価なパソコンを持ち歩かなくてはなりません。そこで加藤さんが開発しようとしているのは、持ち歩く端末自体の性能は必ずしも高くなくても、ブラウザ上でプログラムの作成と実行ができる環境です。最終的には、iPadのみで完結することを目指しているといいます。

ポスターでは、これまでの課題や全体スケジュールがわかりやすく示されており、時間の経過や段階が明示されています。また、現在の課題と達成された成果についても図示されており、現時点でどの程度作ることができたのかが分かりやすい構成になっています。

加藤さんは将来的にはこのプロジェクトを教育現場に持ち込み、現場の意見やフィードバックを得たいと考えています。ポスター発表では、公立学校教員としての経験を持つ実行委員長の鹿野 利春氏が自身の経験をもとにさまざまなアドバイスをしました。鹿野氏は教科書会社との連携について、金銭的に厳しい状況の教科書会社よりも塾の方が協力しやすいかもしれないと指摘しました。また、サーバの構築に関しては、変動するサーバ代に注意し、サービス内容とマネタイズ(収益化)の両方を考えることの重要性を強調しました。

今回のポスター発表ではトレーニーたちが制作したポスターに多くの工夫が見られました。また、トレーナーやアシスタントのほか、地元企業の人々から多様なアドバイスを得られました。来年3月に行われる成果発表会ではA0サイズ(841mm×1189mm)のポスターを用いて発表を行います。それまでにどのような発展をしていくのか、今から楽しみです。

発表後はコースワークが行われました。1日目はアウトプットが中心だったためか、みんな少し疲れ気味です。しかし、1日目のプログラムが終わり、指定の宿に向かう頃には、とっぷり暮れた会場前の御堂筋は年末恒例の大規模なイルミネーション・イベントが開催中。無数のLEDで光り輝くイチョウ並木に、参加者の多くが歓声を上げていました。イベントはまだまだ続きます。

2日目

今後に生かす修了生たちのアドバイス

イベント2日目は、2人のゲスト修了生による講演でスタートしました。

桑原 翼さん(2018年度修了生 開発駆動コース 仲山ゼミ)は、「イノベーションにむけて」というテーマで講演を行いました。イノベーションとは新たな価値を生み出すこと。そして、人々がそれを活用することで社会が変化する――そこまで行って、初めて真のイノベーションと言えると、桑原さんは語ります。

しかしその一方で、桑原さんはかつて自身が開発した「マルウェア解析補助システム」について「イノベーションと言えるまでに至らなかった」と振り返り、その原因を「やりたいことしかやらなかったから」と分析します。

桑原さんはユーザを主軸として考え、ユーザの利用をイメージした開発の重要性を強調しました。ユーザが利用できる形までプロダクトを作り上げることが重要であり、今年から始まった「社会実装の支援」への応募を奨励しました。

桑原さんの講演を受けて、横山トレーナーは技術の壁、ユーザの壁、ビジネスの壁の3つの障壁の中で、SecHack365では技術とユーザの障壁に挑戦してほしいと期待しています。ただし、最初からユーザとビジネスを意識しすぎると技術の基本が疎かになる可能性がある上、ユーザの予想内に収まってしまう可能性があります。だからこそ、全体のバランスを取ることの重要性に触れました。

続いて川原 弘暉さん(2022年度修了生 学習駆動コース 今岡ゼミ)は、「作品と見せ方の試行錯誤について」というテーマで講演を行いました。彼はトレーニー時代に「BALLOON-POT」という世界地図の5大州(オセアニアを除き、アメリカを南北に分けたもの)の上に風船を配置し、サイバー攻撃をしてきた州の上にある風船が膨らむデバイスを開発しました。川原さんは、応募時のテーマや開発の変遷を通じて攻撃を受けたことをどのように可視化するかなど自身の試行錯誤を率直に紹介しました。中間発表で得た意見やその後の動向、開発をしつつも発表の準備をしなくてはならない当時の焦燥感を共有することで、トレーニーたちの共感を生みました。

彼は、自分が開発したものを伝える際の重要なポイントとして、相手の属性を意識してアプローチすることが大切だと述べました。例えば、成果発表会では専門的な人が集まりますが、川原さんも参加した「Maker Faire Kyoto 2023」はセキュリティに普段馴染みのない方も来場されるイベントでした。そのため、何を見せるのかを相手の属性に合わせて、自身の成果物の魅力を伝えることが重要だと説きました。

表現について考えさせられた縁日

オフラインイベントでは、各トレーナーが主催する縁日(ワークショップ)が行われます。今岡トレーナーは、「表現力を深堀する」というテーマで縁日を開き、トレーニーたちにアイデアや技術だけでなく、表現力にも焦点を当てるよう促しました。彼は普段から持ち歩いているウクレレを使用しながら、表現の可能性をトレーニーたちに伝えました。

今回の縁日では、今岡トレーナーが1938年に刊行された『在りし日の歌』に収録されている中原中也の詩に曲をつけてウクレレで弾き語りを披露しました。「村の大きな時計は、ひねもす動いていた〜」といった歌唱を通じて表現し、トレーニーたちにも歌詞を書いてもらうことで、音節を意識しつつ伝えたいことを表現する難しさや楽しさを共有しました。

今岡トレーナーは過去に、「スタートアップウィークエンド(SW)」で小さく持ち運べるウクレレを作り、それを活用して発表したことがあるといいます。これまでの4回のイベントを通して、トレーニーたちはスライド発表やビデオ発表を通して何度も自分の作品を伝え、表現について考えてきました。今回の縁日を通じて、文字や話すだけでなく、歌うなど表現方法は無限大だという気づきを得ました。

柏崎トレーナーは「秋の怪談」というテーマで縁日を開き、クラウドコンピューティングプロバイダからの意図しない請求に関する“怪談”をユーモアと巧みな話術で語りました。話は単なる請求トラブルだけでなく、当時の状況や原因の特定、そして後日談まで展開され、スライドのデザインと語り口がトレーニーたちを惹き込みました。

これにより、技術的な教訓だけでなく、表現力によっても情報を効果的に伝えることの重要性を理解したトレーニーが多かったようです。

法律は万能ではない?

講義

縁日に続いては、今年度のSecHack365恒例、北條トレーナーによる「法律と倫理」の講義です。

「Aくんがある企業(Q社)のウェブサイトで設定ミスにより個人情報が公開されてしまっていることを発見し、それをダウンロードしました。その後、Q社が自社のセキュリティは万全だと宣伝したため、Aくんはその一部の情報をX(旧Twitter)で公開した結果、Q社は謝罪するまでに追い込まれました。友人のBくんは、Aくんが情報を流出させたことに気づきました」

今回はこの事例について4つの視点に分け、それぞれグループに分かれて議論を行いました。

議論中

Aグループは「Aくんの言い訳」について議論し、「アクセスできたから仕方ない」「全部の個人情報は出していない」「流出させた企業が悪い」「自分以外にもいるはず」といった言い訳を想定しました。

Bグループは「Aくんの問題点」について議論しました。設定ミスによりダウンロードができてしまうことに気づいたもののこの問題を企業に報告しなかったこと、データをダウンロードし公開したこと、そもそもAくんの行動すべてに問題があるなどと指摘し、常に傍観者意識(自分がやっているにも関わらず、被害に対する意識が欠如している)であった可能性を指摘しました。

Cグループは「Aくんの友人であるBくんとして」について議論し、Aくんが情報をどこから得たかを確認する必要があると主張しました。しかし、Aくんが正直に答えてくれるか疑問です。また、北條トレーナーは、もしAくんから本件の問題点を教えてもらったとしても、Bくんが企業に教えたところで、自分(Bくん)が疑われてしまう可能性があり、非難されるかもしれない点を指摘しました。

Dグループは「社会的解決策」について議論しました。設定ミスによって公開されたサイトを見てしまったこと自体に問題はないが、それを知った上でダウンロードすること、また拡散することは悪意を持って行なったのではないかと考えました。その上で、設定ミスを発見した人に報酬を与えることでバグバウンティを奨励する仕組みを提案しました。

設定ミスにより公開されている情報をダウンロードしただけでは犯罪にはならないというこの事例。倫理的な面で問題があるのは明らかですが、どのように解決すれば良いのか悩ましい問題です。バグを見つけた人に報酬を与えるバグバウンティを奨励するなど、法律や倫理以外の解決策も模索していかなくてはならないことが分かりました。

大阪ならではのコミュニティトラック

今回のイベントは、4年ぶりの遠征ということで、大阪を拠点とする4つの団体がコミュニティトラックに参加しました。コミュニティトラックでは各団体の活動内容とともに、その魅力がトレーニーたちに伝えられました。

  1. 近畿総合通信局は地域ごとの情報通信行政を担う総務省の機関(地方支分部局)で、安心して快適に利用できる情報通信社会の実現に向けてさまざまな施策を推進しています。最近では、地域単位の事業者のセキュリティ対策を強化する「地域SECUNITY」注3の形成を促進しているといいます。
  2. TKTKセキュリティ勉強会(宮田 明良氏)は、高槻市を拠点に情報セキュリティ向上に向けた勉強会を開いている団体で、特にオフラインにこだわった活動を行なっています。講師には講演料ではなく、旅費や宿泊代を支給しているなど、運営の裏話についても聞くことができました。勉強会では、コミュニティで学び、還元してくれる仕組みづくりを大切にしているといいます。
  3. Panasonic(森田 智氏)からは製品セキュリティについての話を聞くことができました。出荷前の自社製品をハッキングし、穴を見つけるプロセスを行うPSIRT注4。脅威分析やセキュリティ診断、インシデント対応までを担当しています。森田氏は、「品質評価」の仕事はソフトなものだけでなくハードなものまで、さまざまな製品を扱うので飽きやすい性格でもおすすめの仕事だといいます。
  4. Owasp Kansai(宮下 大祐氏)は全国に広がるOWASPのローカルコミュニティで、セミナーや実際に操作して学ぶハンズオン、ゲーム形式でセキュリティに関する知識を普及させています。さらに、お酒や軽食を食べながら交流するビアバッシュ形式などで参加者を飽きさせず、栄え重視のロゴを活用して認知度向上にも努めています。また、他のコミュニティとの連携を通じて新陳代謝を促進することで、コミュニティ加入者を拡大し、今や1071人にもなるといいます。

これらの4つの団体は、異なるアプローチでセキュリティに取り組み、幅広い活動を通じて知識共有やコミュニティの拡大に成功しています。全体発表の後は、個別のブースでトレーニーたちの質問に答えていました。トレーニーたちにとって、セキュリティ人材としての可能性を知る機会になったのと同時に、コミュニティ側にとっても仲間を増やすチャンスとなりました。

注3
地域の民間企業、行政機関、教育機関、関係団体等が、セキュリティについて語り合い、「共助」の関係を築くコミュニティのこと。イベントの開催や専門家からの情報提供の場を設けている。
注4
(Product Security Incident Response Team:ピーサート)自社で製造・開発する製品・サービスに対するセキュリティの向上や、インシデント(不具合や障害など)への対応を目的とする組織。

3日目

散歩も大切?−コースワーク

3日目はコースワークからスタートしました。「アイデアが浮かぶのは、4割が散歩で、6割は風呂に入っているとき」と語る坂井トレーナー。学習駆動コースでは、大阪の街をみんなで散歩しました。会場から大阪城までの往復約4キロメートルの距離を歩いていると、自然と、いろいろな会話が生まれてきます。

修了生から当時の進捗について聞いたり、トレーナーからちょっとした豆知識が披露されたり……。普段部屋にこもって作業していると生まれない、新しいアイデアや視点が広がりました。

思索駆動コースでも、散歩しつつ科学技術館に行きました。福田 海優さんは、ポスター提出時のプレッシャーと塞ぎ込みがちだった状況を振り返りながら、「さまざまな人と話をし、共有する中でだんだんと心のうちで晴れるところ、解消されたものもあり、そのなかで思索駆動コースのトレーナー、アシスタント、トレーニーのみなさんと話をしつつ、科学技術館で交流することができたのはかなり良い機会でした」と述べています。

学習駆動コースでは、会場に戻ってから、自分の開発の特徴を見つめ直し、他の人のものと組み合わせる活動が行われました。特徴は技術的なものに限らず、その本質にまで迫ることが求められました。

坂井トレーナーは、自分で悪い点だと考えていても、それを特徴だと捉える必要性を述べました。例えば、習慣化が苦手な人も決して悪いことではありません。瞬発的に火がついて行動するような人であれば、その火をつけるようにコントロールすることが大切だと語ります。

カジュアルな雰囲気で習慣化

佳山トレーナーの習慣化では、約6人程度のグループになって、今回発表したポスターや第1回イベントから書き足してきたマンダラートを見せて、作品に対するコメントや行動に関するアドバイスを伝え合うワークショップが行われました。トレーニーたちは短い時間でポスターについて紹介し、それぞれ20秒以内でコメントやアドバイスを述べました。

この場は1日目のポスター発表の形式とは異なり、カジュアルな雰囲気で行われたため、グループ内のトレーニー同士でポスターのデザインを褒めるなど和やかな雰囲気で行われました。ごちゃごちゃ感が多様なアイデアを引き出す機会となり、20秒程度と時間が限られているからこそ、率直な意見を伝えることもできたというコメントもありました。佳山トレーナーは、「あの人は詳しかったと思うよ」という情報も重要なアドバイスだと指摘しました。また、得たアドバイスは揮発性のものであるため、メモやマンダラートへの書き込みを通じて、残るものにすることを促しました。

しかし、短時間で自分のアイデアやメッセージを効果的に伝え、共感を得ることは難しい課題です。佳山トレーナーによると、5W1H+Why(なぜ)の質問を通じて、なぜ自分がこれをするのか、その価値を考え、明確に伝えることが重要だと述べています。

次に会うのは成果発表会−クロージング

最後のプログラムとして、「トレーニーグループでのSecHack365活動への交流・相談・議論」が行われました。
ここでは、トレーニーたちに事前に話し合いたい内容を募集し、テーマごとに何組かのグループを編成して、自由に交流が行われました。その中のひとつ、「デザイン思考座談会」では、Webデザインに焦点を当てながら話し合われました。海外と日本のウェブサイトを比較しながら、デジタル庁のシステムデザインなど、ユーザにとって見やすいデザインについて学ぶことができました。

また、「柏崎トレーナー、北條トレーナー、安田トレーナーとの交流会」では、サイバー捜査官になりたいというトレーニーに対するアドバイスも行われました。北條トレーナーによると、日本のサイバー捜査官は、技術的にはできても法律的に手を出しづらいことが多く、アメリカでできることも日本では難しいことがあるとのこと。今後、法律の面から状況を改善していくために、説明力について磨いていってほしいといいます。

この交流会では、柏崎トレーナーが、趣味として休日にもセキュリティ関連の作業をしているといった話が披露されるなど、トレーナーたちのワーカホリックさが垣間見える場面もありました。

交流会が終わると、いよいよクロージングです。年度末まで残り4ヶ月、次回イベントまで2ヶ月という今、多くのトレーニーが焦りを感じています。横山トレーナーは、自分がどんな成果を挙げ、どのような印象を他者に残したいかを考えてほしいと語りました。

SecHack365では、12月27日に約3時間の任意参加のレビューイベントを予定しています。このイベントでは、発表動画、スライド、ポスターを事前に提出し、当日は発表に関する相談や、修了生からのアドバイスも受けられるといいます。このイベントを通じて、年末には活気ある交流の場を形成し、印象的な締めくくりを迎えたいとのことです。

次回の第5回イベントでは1月27日と28日の2日間にわたり、全タイトルの動画発表が行われます。これが、発表と囲む会を実施した仲間同士で見せる最後の機会となります。成果発表に向けて、完成度をどれほど高めることができるのかが注目です。

トレーニーの感想

福田 海優さん
福田 海優さん
思索駆動コース・九州工業大学

トレーニーと思う存分話ができました。違う視点を持つ方との交流もでき、話すなかで自分が考えてきたこと、知識として吸収してきたことをまとめる過程も感じることができました。「レイヤー、技術分野が全く違うから話が発展しなさそうだなぁ」と勝手に決めつけていたところも若干あったのですが、話していくなかで共通の話題で盛り上がったり、そこから視野を拡げたりアドバイスをもらったりするところもありました。

トレーニーと思う存分話ができました。違う視点を持つ方との交流もでき、話すなかで自分が考えてきたこと、知識として吸収してきたことをまとめる過程も感じることができました。「レイヤー、技術分野が全く違うから話が発展しなさそうだなぁ」と勝手に決めつけていたところも若干あったのですが、話していくなかで共通の話題で盛り上がったり、そこから視野を拡げたりアドバイスをもらったりするところもありました。

宇治川 ひかるさん
宇治川 ひかるさん
思索駆動コース・東京デザインテクノロジーセンター専門学校

今回のイベントまでは進捗が出せていない今の状態で発表を行うことが不安でしたが、イベントでは沢山の意見をいただくことができ、自分の作品の注目してもらいたい部分やアピールしたいポイント、届けたい人などの考えをより深めることができました。加えて、次回のイベントまでの目標も見えてきたので、頑張りたいと思います。

今回のイベントまでは進捗が出せていない今の状態で発表を行うことが不安でしたが、イベントでは沢山の意見をいただくことができ、自分の作品の注目してもらいたい部分やアピールしたいポイント、届けたい人などの考えをより深めることができました。加えて、次回のイベントまでの目標も見えてきたので、頑張りたいと思います。

大湯 智也さん
大湯 智也さん
表現駆動コース・日本アイ・ビー・エム株式会社

対面で質問をもらえるのがとても嬉しかった。オンラインでの動画発表形式だった第3回イベントでもFBをもらうことができたけども、展示の場に来ていただいて質問されるのとは言語化できない違いがあると感じた。

対面で質問をもらえるのがとても嬉しかった。オンラインでの動画発表形式だった第3回イベントでもFBをもらうことができたけども、展示の場に来ていただいて質問されるのとは言語化できない違いがあると感じた。

アシスタントの感想

市川拓磨(2022年度修了生)
市川 拓磨さん
(2022年度修了生)
担当コース:全体

第4回イベントデイお疲れ様でした。今回はトレーニーの作品の展示会がメインのイベントでした。展示会はトレーニー・トレーナー・アシスタントごちゃ混ぜで、ポスターを前にワイワイと作品のフィードバックを送ったり議論をしたり、中には他のトレーニーの作品とのコラボレーションを考えているところもあったりと、すごく楽しい時間でした。また、イベントの時間以外でも食事や休憩の時間、散歩のときなどでも雑談や作品のことを話しており、オフラインイベントならではのコミュニケーションが発生していたのがとても印象的でした。全体で集まれる貴重な機会を有意義に過ごすことができ、とても充実したイベントデイだったと僕自身も感じています。

第4回イベントデイお疲れ様でした。今回はトレーニーの作品の展示会がメインのイベントでした。展示会はトレーニー・トレーナー・アシスタントごちゃ混ぜで、ポスターを前にワイワイと作品のフィードバックを送ったり議論をしたり、中には他のトレーニーの作品とのコラボレーションを考えているところもあったりと、すごく楽しい時間でした。また、イベントの時間以外でも食事や休憩の時間、散歩のときなどでも雑談や作品のことを話しており、オフラインイベントならではのコミュニケーションが発生していたのがとても印象的でした。全体で集まれる貴重な機会を有意義に過ごすことができ、とても充実したイベントデイだったと僕自身も感じています。

中嶋 桃香さん(2020年度修了生)
中嶋 桃香さん
(2020年度修了生)
担当コース:表現駆動コース

SecHack365大阪会、みなさんお疲れ様でした!
今回は久々の現地開催となり、トレーニーの皆さんが活発に交流する姿が見受けられました。特に印象的だったのは、ポスター発表の部分です。自らのプロジェクトのデモやコードを披露し、コースの垣根を超えて熱心に議論を交わしていましたね。またトレーニーの皆さんが、積極的に質問をしにいく様子も見受けられました。技術を学び開発するだけでなく、いろんな強みを持った方々と交流できることもこのSecHack365の醍醐味だと感じました。
さて、最終発表が近づいてきました。アシスタント陣も活用しながら最終発表まで駆け抜けていきましょう!

SecHack365大阪会、みなさんお疲れ様でした!
今回は久々の現地開催となり、トレーニーの皆さんが活発に交流する姿が見受けられました。特に印象的だったのは、ポスター発表の部分です。自らのプロジェクトのデモやコードを披露し、コースの垣根を超えて熱心に議論を交わしていましたね。またトレーニーの皆さんが、積極的に質問をしにいく様子も見受けられました。技術を学び開発するだけでなく、いろんな強みを持った方々と交流できることもこのSecHack365の醍醐味だと感じました。
さて、最終発表が近づいてきました。アシスタント陣も活用しながら最終発表まで駆け抜けていきましょう!

吉田 美咲さん(2022年度修了生)
吉田 美咲さん
(2022年度修了生)
担当コース:思索駆動コース

第4回のイベントお疲れ様でした!
今回は大阪に集まってのオフライン回で、一日目は主にポスターの展示と質疑応答を行いました。
二日目は修了生講演や講義などのインプット、最終日は交流会などを実施しました。
三日間を通して、配布された名刺を交換し合って交流を深め、今まで話せていなかった方ともお話する機会がたくさんあったと思います。
また、ポスター展示会ではいろいろな意見をいただいたと思いますが、自分で必要だと思った意見は吸収して、悩みながら試行錯誤して取り組んでいただければと思います。
アシスタントもできる限りお手伝いをさせていただくので、いつでも気軽に相談してください!

第4回のイベントお疲れ様でした!
今回は大阪に集まってのオフライン回で、一日目は主にポスターの展示と質疑応答を行いました。
二日目は修了生講演や講義などのインプット、最終日は交流会などを実施しました。
三日間を通して、配布された名刺を交換し合って交流を深め、今まで話せていなかった方ともお話する機会がたくさんあったと思います。
また、ポスター展示会ではいろいろな意見をいただいたと思いますが、自分で必要だと思った意見は吸収して、悩みながら試行錯誤して取り組んでいただければと思います。
アシスタントもできる限りお手伝いをさせていただくので、いつでも気軽に相談してください!

石川琉聖(2020年度修了生)
石川 琉聖さん
(2020年度修了生)
担当コース:研究駆動コース

久々の現地でのイベントデイ、お疲れ様でした!今回はポスター発表が1番の目玉だったと思います。トレーニーの皆さんが、他のトレーニーやトレーナーの方々に自分の作品の魅力や課題を最大限伝えるよう努力されていたのがよく伝わってきました。あとひと頑張りだったり、まだ課題が山積みだったり、色々模索していたり皆さん十人十色の進め方をされていて非常に感動しました。
残り約2カ月間、最後まで走り切るためのいい追い上げができたと思います。一緒に頑張りましょう!

久々の現地でのイベントデイ、お疲れ様でした!今回はポスター発表が1番の目玉だったと思います。トレーニーの皆さんが、他のトレーニーやトレーナーの方々に自分の作品の魅力や課題を最大限伝えるよう努力されていたのがよく伝わってきました。あとひと頑張りだったり、まだ課題が山積みだったり、色々模索していたり皆さん十人十色の進め方をされていて非常に感動しました。
残り約2カ月間、最後まで走り切るためのいい追い上げができたと思います。一緒に頑張りましょう!

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