SecHack365 2022 / 成果発表会(23/03/04)レポート /
優秀修了生インタビュー2023.04.03
優秀修了生インタビュー2023.04.03

成果発表会(3月4日)
2022年度の成果発表会は、3月4日(土)アキバ・スクエアで開催しました。2018年度の成果発表会以来、やっとこの場所に戻ってきて開催することができました。
当日は午前中からテクニカルリハーサルと並行して、コースごとに出展準備や発表準備を行いました。初めて外部の方に成果を発表する場となりましたが、一般の方だけでなく、1年間応援していただいた家族や学校の方にも成果を見ていただく機会にもなり、あっという間の1日でした。
最後に全員が修了証を手にした際には皆やりきった表情だったのが印象的でもありましたが、やはり人と接して発表を聞いていただくことは、とても手応えのあるものだったのだと思います。
2022年度 SecHack365成果発表会ダイジェスト映像
今年度最後のレポートでは、2022年度の優秀修了生の率直な感想と各コースマスターとアシスタントからのひとことをご紹介させていただきます。
2022年度優秀修了生インタビュー

思索駆動コース 優秀修了生加納 源基さんGenki Kano
01優秀修了生に選ばれた感想を聴かせてください。
何の前触れもなく突然優秀修了生に選ばれたことが発表されたので頭が全く追いつかずに実感が湧かなかったのを覚えています。 他のトレーニーやトレーナーが言及してくれて本当に優秀修了生に選ばれたのだと実感して喜びました。
第6回イベントの発表でのデモの完成度や、発表中にデモを使わせる発表方法などが評価されたとのことで自分の考えが共感されたこと、デモのチャットツールを使ってもらった時にチャットが盛り上がったことが、なによりも嬉しかったです。
02どんな作品を作りましたか?なぜその作品を作ろうと思いましたか?
ieruという心理的安全性を高め、 発言のハードルを下げるチャットツールを作成しました。
僕自身、 常日頃から感じていた「文字を書いてから送信ボタンを押すのを止める」、 「聞くほどのことでもないかと思い質問をしない」といった”言えなくなる”という問題に対して、 もやもやというか、 ある種の気持ち悪さ、 不健全さの様なものを感じていたので、 これを解決できる作品を作ろうと思いました。
03応募前から無事修了を迎えるまでの約1年間はどんな日々でしたか?
応募前は「どうせ通らないけど応募だけはしておこう」という軽い気持ちで応募課題に取り組んでいました。 一部のトレーニーには話したのですが、 実は合格のメールが来た後の受講確認で、 自分が他のトレーニー達についていけるか、 無事修了できるかが不安でしょうがなく受講をするか迷っていました。
編入試験や、 卒業研究などがある中「なんとか修了するぞ」という気持ちで毎週のコースワーク、 全体課題、 コースマスターの無茶振りに全力で取り組んでいたらいつの間にか終わってしまっていた、 そんな1年間でした。
04SecHack365で得られたことはどんなことですか?
一つの作品について開発を続けるための技術力と継続力、同世代のものづくりに取り組む友人達、様々なことに取り組んでいくための地盤となる習慣化の力、セキュリティとは違った哲学や文学、芸術の一部の知識などを得ることができました。
これらは今後、僕の人生を豊かにしてくれると思います。

学習駆動コース 優秀修了生首浦 大夢さんHiromu Kubiura
01優秀修了生に選ばれた感想を聴かせてください。
今でもあまり実感がありません。ただ、素直に嬉しいと感じています。今岡トレーナー・今岡ゼミみんなと意見交換しながら作り上げてきたものなので。
初めてのことばかりでなんとか形に落としこめたという感じなので、これからも時間を作ってもうちょっと取り組んで行きたいと思っています。
02どんな作品を作りましたか?なぜその作品を作ろうと思いましたか?
打鍵音からキーボード入力を推定する攻撃の応用です。応用部分は打鍵音の入手方法になります。Wi-Fi接続可能で高性能な打鍵音取得に特化した無線マイクを作成し、そのマイクを使って打鍵音を入手します。
きっかけは先行研究等でオンラインミーティング中に打鍵音を入手できる可能性が挙がっていたことです。近年のボイスチャットアプリケーションのノイズキャンセリング性能はとても高く、ノイズと判断されやすい打鍵音をアプリを通して得るのは難しそうだと思いました。そこで、当たり前な方法ですが無線マイク作ればいいんじゃね?と。めっちゃ当たり前だからみんなやらないだろうし、攻撃者になってみる活動というのはこのような開発・研究活動でしか許されないので取り組むことに決めました。
03応募前から無事修了を迎えるまでの約1年間はどんな日々でしたか?
卒業と同じ年にやっていたので、忙しすぎました。2つの研究を同時並行しながらやっている人を尊敬します。
周りに技術面でしゃべりたい人が多い1年だったのでそういう会話を今まで以上に頻繁にしていた気がします。なので、しんどかったけれど飽きない1年でした。
一方で、成果が出るまでは不安しかなかったです。テーマも何回か変更しているので、迷走していましたがこの不安面の経験こそ今後の役に立てばいいなと思っています。
04SecHack365で得られたことはどんなことですか?
2つあります。プレゼン力と課題・ゴールの設定方法です。
プレゼン力に関しては、みなさん僕の発表動画見れると思うのでそこでこいつはこんなプレゼンするんだなと思っていただければ。
課題・ゴールの設定方法は松竹梅の3段階を取るというものです。
どうしても納期というものは発生します。その納期に間に合わず何もないという状況は最悪です。そこで松竹梅の3段階のゴール設定をすることで、まずは絶対できる梅を達成しそれでも時間があればおそらくできるであろう竹を、最後にこれできたら最高!の松をやるんですよ。これによって、時間の調整がクリアにできるようになりました。

学習駆動コース 優秀修了生谷口 宝さんTakara Taniguchi
01優秀修了生に選ばれた感想を聴かせてください。
異質な作品だったので、選ばれた時は正直ビビってしまいました。
02どんな作品を作りましたか?なぜその作品を作ろうと思いましたか?
画像生成AIのコンテストを作りました。その作品を作ろうとした理由は、誰もやってなかったからというのが一つですね。もう一つはこの素晴らしい画像生成AIという道具を、コンテストというある程度ホワイトな枠組みを通して広めていきたいと感じたからですね。私は絶望的に絵が下手で、中学校の美術の成績は落第寸前の2でした。でも絵を見るのは大好きでした。そんな中自分のイメージを絵にできる道具が出てきて感動したというのがその理由です。
03応募前から無事修了を迎えるまでの約1年間はどんな日々でしたか?
実は8月くらいまではゲームを作ろうと考えており、実際ゴリゴリコードを書いていました。しかしこの作品が本当の多くの人に触れてサイバーセキュリティ啓発に繋がるのかわからなくなり、疑心暗鬼となる日が続きました。8月頃にこの画像生成AIが出てきた時、本当に感動して、この感動を作品に繋げたいと強く思いました。その結果このAIアートコンテストが完成しました。かなりモチベ駆動だったので、正直なところを言うと忙しかったですが、やりたくないと思ったことはなかったです。一方で、学業との両立は大変でした。
04SecHack365で得られたことはどんなことですか?
大切な仲間とトレーナー人との繋がり、そして何よりも何か一つのことをやり抜いたというかけがいのない経験だと思います。

開発駆動コース 優秀修了生中神 悠太さんYuta Nakagami
01優秀修了生に選ばれた感想を聴かせてください。
数多くの面白い作品がある中で優秀修了生として選んでいただき、とても嬉しかったです。また、作品の開発にあたって多大なるご支援をいただいた、ゼミマスターの川合トレーナーをはじめとするSecHack365関係者全ての方々への感謝の気持ちでいっぱいです。年度始めにSecHack365のトレーニーとして合格連絡をいただいたときから「絶対に優秀修了生に選ばれるぞ!」という野望を抱き続けていたので、無事達成できてホッとしているという気持ちもあります。
02どんな作品を作りましたか?なぜその作品を作ろうと思いましたか?
“SysDC”という、ソフトウェア設計における設計工程を支援するための自作言語を開発しました。この言語を使用することで、ユーザは設計の可視化や評価、検証といった作業を簡単に行うことができるようになります。
設計という工程は開発対象を正しく理解するという意味でとても重要ですが、多くの開発者は適当に行っていたり、そもそも全く設計を行わない場合もあったりと、現状ではあまり重要視されないことが多いです。このような現状を打破し、より多くの開発者が設計という工程を好きになれるような世界を目指して作品を作ろうと思いました。
03応募前から無事修了を迎えるまでの約1年間はどんな日々でしたか?
SecHack365という事業は数年前から知っており、実は一度応募して不合格になったことがあります。その後受験などの関係で数年応募を見送っていたのですが、やっと色々なことが落ち着いたので、今年は絶対に合格するぞと意気込んでいました。アイデアはいくつか思い浮かんでいたので、その中から一番自分が得意で楽しめそうなものを一つ選んで応募資料を書きあげました。
その後、無事に合格通知をいただき、SecHack365での一年がスタートしました。私は応募の時点でアイデアを固めていたため、スタートと同時に開発を進めました。開発の過程ではイベントでの発表や交流を通し、より良い作品となるように多くの機能を実装していました。しかし、12月末という最終発表会の1ヶ月前に作品の方向性が迷子になってしまうというトラブルがありました。このときは「本当にこの作品は有用なのだろうか」という気持ちになってしまい、開発が手につかなくなることもありましたが、川合トレーナーをはじめとするゼミメンバーとの意見交流を通してなんとか立て直すことができ、最終的には成果発表会で多くの方々に評価されるような作品を完成することができました。
こうして一年を振り返ると、自分ながらよく頑張ったなぁという気持ちになります。苦労も多く忙しい一年でしたが、その分だけ自分が成長できたように感じます。
04SecHack365で得られたことはどんなことですか?
実装力や継続力など…色々挙げていくとキリがないですが、その中でも自分にとって一番大きいと感じているものは表現力です。SecHack365では毎回のイベントで何かしらの発表を行う機会が設けられています。私はこの機会を通して自身のことを多くの人に理解してもらおうと思い、発表資料や発表練習に多くの時間をかけて準備しました。
作品を作り上げたとしても、その魅力が多くの人々に伝わらなければほとんど意味はありません。SecHack365という場は、魅力を多くの人に伝えるための表現力を鍛える場として、とても意義のある空間だったと感じています。

開発駆動コース 優秀修了生八木橋 拓之さんHiroyuki Yagihashi
01優秀修了生に選ばれた感想を聴かせてください。
たくさんのトレーニーが様々な面白い作品を作っている中、優秀修了生に選んでいただきとても嬉しいです。一年間切磋琢磨して一緒に開発をしてきたトレーニーの方々と、アドバイスいただいたトレーナー・アシスタントの方々にとても感謝しています。
02どんな作品を作りましたか?なぜその作品を作ろうと思いましたか?
Altheaというプログラミング言語を開発しました。Altheaの特徴は、所有権と参照カウントを組み合わせた所有権付き参照カウントというメモリ管理手法を備えていることです。この手法によって、プログラミング時に発生する「性能が安定しない」「手動メモリ管理による脆弱性」「学習コストの増大」という3つの課題を解決することができました。
この作品を開発しようと思った理由は、仕事でWeb APIを開発する際にガベージコレクションのアルゴリズムによってはパフォーマンスに悪影響を及ぼすことを知り、その悪影響がない言語を作ろうと思ったからです。
03応募前から無事修了を迎えるまでの約1年間はどんな日々でしたか?
応募前は自分の作りたいものが採択されるか不安でした。無事に採択された後は、各イベントごとに目標を定めてひたすら開発する日々でした。思うように進捗が出ないことや、作品に価値があるかを自問自答し悩むことが多くありましたし、各イベントの前はデモや発表資料を間に合わせるために寝る間を惜しんで開発や資料作成をしていました。そういった日々の中でコア機能が動作した時はとても感動しました。
04SecHack365で得られたことはどんなことですか?
作品の開発を通して技術力が得られたのはもちろんのこと、作品について発表する機会が多かったため自身の作品を正しく相手に理解してもらう表現力も得ることができました。私の作品はプログラミング言語であり、コア機能はメモリ管理というかなりニッチな分野だったので、前提知識のない相手に作品の内容を伝えるのにとても苦労しました。何度も発表していく中で、説明の順序、言葉、図、例え等を工夫してなんとか自身の作品について伝えることができたように思います。また、SecHack365を通して多くの尊敬できる方々と出会うことができ、そういった方々から多くの刺激を得ることができました。

開発駆動コース 優秀修了生山本 桃歌さんMomoka Yamamoto
01優秀修了生に選ばれた感想を聴かせてください。
優秀修了生に選ばれると思っていませんでしたが、SecHack365のトレーニーの仲間の皆に自分の成果を伝える中で他の人とは違う影響を与えることができたことを評価されたのではないかと考えています。お互いに良い影響を与え会えたSecHack365という環境に感謝しています。
02どんな作品を作りましたか?なぜその作品を作ろうと思いましたか?
私はIPv6アドレスのみを使用するIPv6-only環境とIPv6->IPv4への変換技術に注目しました。この環境でIPv4アドレスを直接利用した場合に起きる問題とそれの解決方法についてまとめました。
03応募前から無事修了を迎えるまでの約1年間はどんな日々でしたか?
自分が所属していた仲山ゼミでは毎週ゼミで集まって進捗確認をする時間がありました。イベント日前はスライドやポスターの作成を一緒に頑張り、余裕がある日は一週間起きたことをお互い話します。この仲山ゼミでの進捗共有の時間に仲山ゼミの仲間の進捗を聞き刺激を毎回受ける日々を過ごした一年でした。
04SecHack365で得られたことはどんなことですか?
1年を通して自分の好きな技術や成果に関して発表する機会が多く用意されたため「うまく発表する技術」を鍛えることできました。自分の成果について発表する中で、自分の成果について見つめ直しより相手に伝わる発表を心がけることができました。またたくさんのトレーニーの仲間による発表をたくさん聞くことができ、他のトレーニーの活動による刺激をたくさん得られました。