SecHack365 2026 / Report 1st Event WeekReport 1st Event Week

第1回イベント(2026年6月13日)

Keypointsof this event

  • # 2026年度は「世界観駆動コース」「融合駆動コース」が新設
  • # AIの進化を生かしたセキュリティイノベーターで日本を救う!

セキュリティイノベーターが日本を救う

SecHack365は「目指せ! セキュリティイノベーター」というテーマを掲げ、セキュリティを生かして社会をより良くする力を備えた人材を育成していくことを目指す取り組みです。

2017年のスタートから10年目という節目を迎えたSecHack365がユニークなのは、365日、つまり丸一年間という他に類を見ない長期ハッカソンを通して、受講者(以下、トレーニー)それぞれが抱く課題を掘り下げ、NICTや大学・企業の最先端で活躍するトレーナーの助言を得ながら「作品」を作り上げていくことです。

2026 年度の SecHack365 には、中学生から社会人までの40名が参加し、「表現駆動」「学習駆動」「開発駆動」「研究駆動」に加え、新たに「世界観駆動」「融合駆動」を加えた 6コースに分かれて進められます。

オープニング ―― 「作ること」「見せること」を楽しもう

第一回イベントは、横山輝明トレーナーによるオリエンテーションから始まりました。

横山トレーナーはまずトレーニーに向け、「クリエイティブとセキュリティを両立できる人間になってほしい」と呼び掛けました。セキュリティの研究を突き詰めるもよし、それを活用して新たなサービスやコンテンツを作るもよしで、それぞれのクリエイティビティを発揮しながら約一年間の創作活動に取り組み、社会をよりよいものにしていってほしいと言います。

横⼭トレーナーは、「私たちは、勉強してちゃんと理解できてから作ろうと、順序よく考えすぎてしまうことがあります。しかし、このやり⽅では得てして停滞します。SecHack365 においては、作ることを⼀つの⼿段にして、いろいろなことを試してほしい」と述べました。

さらに、AI の進化によって開発のハードルが下がっていることも生かして、「作ること」「見せること」を楽しみ、一連の活動を通して「自分はこんなことが得意です」と言える「色」を付けていってほしいとエールを送りました。

トレーナー&アシスタント紹介、トレーニー自己紹介

トレーナー自己紹介では、のっけから川合秀実トレーナーが「趣味はプログラミング、特技もプログラミングです」とジャブを放つなど、自分たちの「好きなこと」「興味のあること」を、トレーニーに先立って紹介していきました。

一方トレーニーたちは、あらかじめ作成したプレゼンテーションを用いて巧みに自己紹介を行いました。もう具体的に「フェイクを見破れるような仕組みを作りたい」「ゲームで横行している特定のチート行為を解決したい」といった目的をはっきり提示しているトレーニーもいれば、「まだこれと決まっていないけれども、皆が許容している小さなモヤモヤを晴らしたい」という、ポテンシャルを感じるトレーニーもいました。

中には、「熊の目撃情報を共有できるサービスへの偽投稿を何とか防ぎたい」と考え、開発に取り組むだけでなく、県庁にアポイントメントを取ってヒアリングまで行うような行動力を持ったトレーニーもおり、この一年間でどのような形に結実するかが楽しみです。

この中で柏崎礼生トレーナーは、「セキュリティ」という言葉の語源をラテン語に遡って考察し、「何らかの心配事から引き剥がすこと」と定義した上で、「じゃあ、皆さんはどんなもにょもにょを抱えていますか」と語り合っていました。

また、今回初めてトレーナーを務めることになった大神祐真トレーナーは、人間をハードウェアとして扱う「人間OS」をはじめとする、自作OSを中心とした自身の活動を楽しげに、時間いっぱいまで使って紹介しました。「何かを出すことで情報は集まってきます。自分の好きなものはぜひ同人誌のようなコンテンツにして、出展してみてはどうでしょう」とアドバイスしていました。

講義 ―― 法律と倫理:技術とともに倫理観やセキュリティ意識も

SecHack365はトレーニーが技術や知識を身に付け、社会を変えていくことを狙いの一つにしていますが、その際には「何をすべきではないのか」「何はしてはいけないのか」も押さえておく必要があります。現役の弁護士である北條孝佳トレーナーによる「法律と倫理」の講義は、一年間を通して、トレーニーが身に付けた力をどのように使うべきかという指針を示すものです。

初回の講義で北條トレーナーは、「自由」「権利」「誤解」「倫理」「責任」という5つのキーワードを挙げ、一見小難しく思える条文の裏に存在する構造を説明しました。

法律は、⼈々の⾃由や権利を保障するものです。もし、それぞれが「⾃分の⾃由だ」とやりたい放題になってしまうと、今度は他者の⾃由や権利、利益を侵害しかねません。そのため法律は、⼈々の⾃由を保障しながら、こうした⾃由や権利の衝突を調整する役割を果たしているのです。

そして、自由は好き勝手とは違います。北條トレーナーは、よくある誤解として、正義感に基づいて犯罪者の情報をさらすような例を挙げ、「正義のためだからといって、犯罪者相手ならば何をしてもいいかというとそうではありません。社会のためだというのは免罪符にならず、違法は違法です」と述べ、AIシステムへの攻撃やディープフェイクといったテーマにも同様に向き合ってほしいと述べました。

外部からのブレーキに当たる法律とともに、自分の中に内在するブレーキである「倫理」を意識することも大切です。新たな分野に取り組むと、法律上は明確に禁止されていないグレーゾーンに踏み込む可能性があります。北條トレーナーは「技術力が高いほど悪用可能な情報に触れやすくなり、軽い気持ちで一線を越えてしまう恐れが高くなります。そのことを自覚し、踏みとどまってほしいと思います」と呼び掛けました。

最後に「今後皆さんが生きていくデジタル社会、 AI社会には技術も不可欠ですが、それと同じくらい倫理観やセキュリティ意識も必要になることを忘れないでください」とメッセージを送りました。また、これからの一年間でトレーニーたちが生み出そうとするものが法律上の問題に触れないか不安になることがあれば、まず自分で徹底的に調査し、考えた上で相談してほしいと呼び掛けました。

井上所長による挨拶 ―― セキュリティイノベーターが日本を救う

NICTサイバーセキュリティ研究所の井上大介所長は、長年携わってきた「NOTICE」プロジェクトの他、NICTER、DAEDALUS、NIRVANA、WarpDriveといった、サイバー攻撃をさまざまなベクトルで観測し、可視化する研究開発事業や、セキュリティ基盤研究室が進めるPQCへの取り組みを紹介しました。

最近のハイライトが、AIセキュリティ研究センター「CREATE」の設立です。AIの急速な進化に伴って、主要OSやブラウザに次々脆弱性が発見され、「大脆弱性時代」と表現できそうな時代が到来しています。これに対しCREATEでは、AIを用いて脆弱性を洗い出す「ファジング」をはじめ、AIを活用したセキュリティ技術の開発とAI自体のセキュリティ強化に向けた研究を進めています。

また井上所長は、実はとある人気ロールプレイングゲームで、「攻撃魔力世界一」のキャラクターを育成した実績の持ち主でもあります。その経験から言うと、「二位や三位までは行けても、そこから一位まで飛び上がるのは非常に困難です」。だからこそ、25歳以下の内に、どんな分野でもいいので世界一を取り、見える景色が全く違うという体験をしてほしいと呼び掛けました。

そして最後に、「日本のセキュリティ自給率は最低レベルで、国産の製品で国を守れていない状況にあります。できるなら自分たちの国は自分たちの技術で守りたいものですよね」と述べました。そうした技術を作り出すためにも、SecHack365に参加しているセキュリティイノベーターが果たす役割は非常に重要です。井上所長は「セキュリティイノベーターが日本を救います。ぜひ何かの世界一を目指して頑張ってほしいと思います」とエールを送りました。

講義 ―― 習慣化:頑張らないを頑張ろう

オンラインイベントでは、トレーニーたちはMattermostというチャットツールを用いてコミュニケーションします。そのチャットが非常に盛り上がるのが、佳山こうせつトレーナーの「習慣化」講義です。

夏休みの宿題でよくあるのが、スタートダッシュは良くても途中でペースが落ちていき、だんだんテキストを開くのさえ苦痛になっていくパターンです。佳山トレーナーが習慣化講義で目指すのは、そんな風に途中で立ち止まらず、前に向かって続けられるようになることです。それも、歯を食いしばって苦しみながらではなく、「​​頑張らないでも頑張れる習慣化」によって、活動を続ける力を獲得することを目指しています。

佳山トレーナーは、何かを続けるポイントは「楽しい実感」だと言います。やらなくちゃと追い込まれるのではなく、「ホクホクと満たされる気持ち」を持つことで能動的に動くことが大切になるのです。

これを実践するには、最初から大きな目標を掲げるのではなく、小さな目標を作って小さなアウトプットを出していくことが鍵になります。

そんなプロセスを実践する具体的なツールが「マンダラート」です。佳山トレーナーは、過去のトレーニーたちがどんな目標を書き込んだかを紹介しながら、2026年度のトレーニーにも実践を呼び掛けました。このマンダラートは、二回目以降のオフラインイベントで掲示され、付せんを通してコメントし、コミュニケーションのきっかけとしても活用されていきます。

部活動「セキュリティ課題探究」

部活動「セキュリティ課題探究」2026年度は、トレーニーにSecHack365という場をより理解してもらい、作品作りを加速させるため、ヒントを提供する新たな講演が企画されました。

「セキュリティ課題探究」は、それぞれが抱く漠然としたセキュリティ課題を言語化し、それに基づいて作品にセキュリティ要素をインプットしていく過程を支援する講義で、習慣化と同じく佳山トレーナーが担当します。

「セキュリティと言うと暗号化や脆弱性診断といった単語が浮かびます。では、なぜそれらが必要かといえば、私たちを付け狙う脅威があるからです。それらを掘り下げ、背景を知った上で、自分の作品がどう安全か、あるいは自分の作品がそうした脅威の撲滅や抑止に寄与するかを言語化できれば、皆さんの作品がぐっと面白くなります」(佳山トレーナー)

そこで、通称「セキ活」という部活動ライクな形で、隔週のオンラインミーティングを通して、脅威や脆弱性、セキュリティ運用フレームワークやガイドラインについて学んだ上で、各々の作品のセキュリティ課題につなげていく予定です。佳山トレーナーは「ゆくゆくはSecHack365の出張講義にしたり、コミュニティとして貢献したいといった思いを込めています」といい、早速活発な議論が交わされています。

柏崎トレーナーからお話「SecHack365の歩き方」

これからの一年、どのようにもの作りに取り組めばいいのかと不安を抱いているトレーニーがいるかもしれません。柏崎トレーナーはそんなトレーニーに向けて、「SecHack365の歩き方」というタイトルで、いつもの独特の語り口で話しかけました。

SecHack365に参加すると、作品作りに向け、あれもこれもやらなくてはと考え、時間が余るのはもったいない――という気持ちになりがちです。しかし柏崎トレーナーは「暇」、つまり「バッファ」も大切だと言います。

「暇になって、その中でいろいろな他者を見て、『あの人の作品はすごいな』『あの人の言葉遣いは素敵だな』といったことを考え、今度は自分がやってみようかな、と思えるようになっていきます」(柏崎トレーナー)

自分以外の他者から何かを受け取り、今度は自分が他者に優しさや親切を返していく――そんな、優しさで満たされる世界であってほしいと言います。

そんな他者と語り合うという意味でも、ぜひ「『見学してもいいですか?』と尋ねて他のコースに行ってみて、どんなことをしているかをぜひ見に行ってみてください。他の活動を見に行くのはとても楽しいことですし、逆に、自分の好きなことをどんどん共有していきましょう」と呼び掛けました。

またSecHack365を通して共通の趣味が見つかれば「ランニング部」「競技プログラミング部」などでどんどんわいわいガヤガヤ楽しめる一年になってほしいといいます。

園田センター長からお話「1日に1個平均ですんばらしいアイディアが降って来る?」

作品作りを進めていく中で、考えても考えてもいいアイデアが思いつかない――そんな局面にぶつかることもあるでしょう。

園田道夫トレーナーは、「いい発想がなかなか降ってこない時は、素晴らしいアイデアを一個つかもうと考えるのではなく、突飛なことも含めて量産することを意識してみるといいのではないでしょうか」と言います。

ただ、いきなり「アイデアを量産せよ」といってもなかなかできるものではありません。そこで、久保田トレーナーなどとともに、アイデアや発想を生み出すためのワークショップを開催し、幅広さと深さの両方を追求できる場を用意していく予定です。

アシスタントから活動紹介

SecHack365の修了生で、今年はトレーニーを支える立場に回るアシスタントたちからも、自分の経験も踏まえながらエールが送られました。

プロトタイプの作成とフィードバックのループが大事

2025年修了生の片岡昴晴さんは、イラストの制作過程を改ざん困難な形で記録し、第三者が検証可能な証明書を発行できるインフラ「Hito-Fude」や、セキュリティ教育ゲームの「Archive」、Webエンジニアのためのセキュリティ“体感”ツール「まもコード」をチームで開発しました。

片岡さんはその経験を踏まえ、「プロトタイプの作成とフィードバックのループがとても大事だと思っています」とアドバイスしました。文字だけでは伝わらないことも、プロトタイプで目に見える形になればわかりやすくなり、トレーナーや来場した専門家からの意見がもらいやすくなります。そこで得た気付きや、イベント回ならではのコミュニケーションを生かしてブーストをかけ、時に方向転換しながら作品作りを進めていってほしいと呼び掛けました。

また、「同じSecHack365をともにする仲間ですから、仲良くならなきゃ損です」と、積極的にコミュニケーションを取って楽しむこともポイントだといいます。もう一つ、忘れてはいけないのが「締め切り」です。コツコツ積み重ね、最終的に「自分にしか作れない」と胸を張って言えるプロダクトを作ってほしいと応援の言葉を贈りました。

スパイ活動、そしてコミュニティ活動を楽しむ

2020年度のコンテンツゼミ修了生の池田雄翔さんは、迷惑メールやフィッシングメールといったテーマに取り組んでいました。トレーニーだったときは「自分が所属していたゼミ以外に、他のコースのミーティングにも『スパイ』として参加し、いろいろと勉強しました」と、当時をふり返りました。

そんな池田さんは、チャットへの書き込みをきっかけに、ネットワークオペレーターが集まるコミュニティやセキュリティカンファレンスなどさまざまなコミュニティに参加し、活動しています。また、SecHack365の同期と一緒にCTFに参加したり、逆に企画・運営したりと、アクティブに活動しています。そんな経験を踏まえ「ぜひSecHack365でコミュニケーションを取り、皆で活動していきましょう」と呼び掛けました。

遊座 広太郎
遊座 広太郎

SecHack365というコミュニティに浸かろう

SecHack365では、各コースでの議論に参加し、トレーニーを支援するコースアシスタントの他に、「全体アシスタント」がいます。主な役割はイベント回の企画・進行のほか、オンラインコミュニケーションのサポートで、「誰かに相談したいけれど相談先が分からない」「ぼんやり考えているものを明確化したい」と言ったときの壁打ち役となります。

遊座さん自身、モヤモヤを抱えて悩んでいたとき、他の人にアウトプットすることで自分の思考が研ぎ澄まされた経験があるそうです。AIを相手にするのも一つの方法ですが、やはり人から得られるものは小さくないため、ぜひ活用してほしいと言います。

遊座さんはさらに、自身の経験を振り返り、甘えじゃないかなと思いながら、ある先輩に壁打ちで意見を求めた際のエピソードを紹介しました。そのとき先輩からは、「壁打ちは大事です、全然甘えじゃないと思います」と返ってきて、その言葉が心に残ったそうです。

こうした経験を踏まえ、「SecHack365を遠慮なく『使って』という表現が打算的に感じるようであれば、SecHack365というコミュニティに遠慮なく『浸かって』、より良いものを得ていきましょう」と呼び掛けました。

クロージングと放課後

こうして朝から夜までの密度の濃い一日が終わりました。

横山トレーナー長は最後に、9月の展示で具体的な何かを見せることを目標に、それぞれの取り組みを進めていってほしいとエールを送りました。

「時には、学業や仕事と両立する中で気持ちの浮き沈みもあるかと思います。けれど、SecHack365に来たいと思ってくれた今日の気持ちを忘れず、楽しむことの延長として皆を面白がらせるもの、驚かせるものを見せてほしいと思います」(横山トレーナー)

9月の展示会の前には、7月24日・25日にわたって行われる第2回イベントがあります。初めて実際に顔を合わせるだけでも楽しみですが、アイデアや作品を持ち寄り、見せ合い、フィードバックを通してさまざまな気付きを得るチャンスになるでしょう。

「6週間で何ができるか――頑張ってみてください」(横山トレーナー)

そして公式プログラムの終了後には、放課後タイムとして、アバターを介して音声でコミュニケーションできる「oVice」に移動し、ツールの使い方に慣れながら、住んでいる地域や興味あるテーマに分かれて、ワイワイガヤガヤと会話を楽しみました。こうしてスタートを切ったトレーニーたちが、これからの一年間、何をつかみ、どう成長していくのか、非常に楽しみです。

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