SecHack365 2018 第5章 愛媛回 レポート
SecHack365 2018 第5章 愛媛回2018.12.25
こんにちは、NICTの鎌田です。11月30日から12月2日にかけて、四国の愛媛で5回目となる集合回がありました。
ここでちょっと今年度のSecHack365のおさらいをしたいと思います。1回目の5月ではSecHack365でどう過ごすべきかをディスカッションをし、ここで何が求められているのか、発想することや開発することを習慣化していくことの大切さなどを共有しました。
2回目、6月は自分が作りたいモノは何なのか、コアを探りながら形に落としていく回。3回目、8月は制作しているものの状況報告と更にアイデアを膨らませる回。6月と8月は会社見学もありました。
4回目、10月にはポスターによる発表と、制作物のブラッシュアップをする中間報告の回でした。
そして5回目、この12月の回は、いよいよ『動くデモ』を見せる回となりました。ポスターも見やすいように更新をし、発表の技量もぐんと上がります。人に見せることが増え、よりアドバイスを受け止める力がついてきています。動いたデモはどう評価され、改善されていくのでしょうか。チームごとに分かれた発表会の会場はトレーニーとトレーナーが常に言葉を交わす、とても活気のあるものでした。
がんばるぞー!えいっえいっ おー!
3月の成果発表までカウントダウン!“大”リハーサル大会(プレゼン発表編)
初日の大リハーサル大会では、Aチーム、Bチーム、Cチーム、Dチームに分かれ、トレーナーによるレビュアー数名が見守る中、トレーニーたちはプレゼンテーションによる発表を10分間行いました。時間内に発表を終わらせ、レビュアーから4分間コメントをもらいます。
リハーサルとはいえ内容は真剣です。5〜10人を前にするので発表者と聴講者の距離はとても短く、単に発表して終わり、というものではありません。適度な緊張の中、発表をしていました。4チームが並列で発表を行うのでトレーナー全員が全員を見ることはできません。ところどころで一生懸命に発表している姿や鋭い眼差しでコメントをするトレーナーの姿がありました。
トレーナーがチェックするポイントとしては、『聞き手にわかりやすく伝えられているかどうか』などを見ていました。
US AIRFORCE特別講演、「Hack The Air Forceに参加しよう!」
Charles Jacob Cadwell(チャールズ・ジェーコブ・キャドウェル)さん(以下、キャドウェルさん)が米国から日本のNICTに派遣されてきました。マンスフィールド研修という、日米の行政を円滑・強化するための財団が米国国籍の人材を日本へ派遣するプログラムです。彼の今回のミッションは日本のサイバーセキュリティ分野における人材育成の現場を知ること。そのプログラムの中で、SecHack365に参加することも含まれていました。キャドウェルさんは米軍のサイバー軍に所属しています。彼の所属するサイバー軍の活動やその組織についてのお話が中心でした。そして、Hack the Air Force(HtAF)という米軍の使用しているシステム(主に一般に公開しているもの)に脆弱性がないか見つけるハッキング・コンテストの紹介がありました。このHtAFはかれこれ3回開催されており、今年は191ヶ国のHackerたちが参加しました。初回では高校生がNo1を取り、世間を賑わせたそうです。キャドウェルさんは会場のトレーニー達に「来年このコンテストに応募しませんか?」と問いかけました。すると5人が挙手。さすがSecHack365のトレーニー。チャレンジ精神旺盛です。大人にとっても米軍の話は新鮮で、全員が夢中になって聞き入っていました。キャドウェルさん、ありがとうございました。
動いたかな?動いた!やっぱり“楽しい”(デモ&ポスター発表編)
2日目はいよいよ動くデモを披露します。ポスターを用いて概要を説明し、実際動くところを見せるのです。無事動けばいいのですが、もちろん動かないケースもあったり、実装が半分のところも。デモが動いていたとしても、その機能が誰の役に立つのかを上手に言えないケースがありました。たとえニッチな機能でも、一番わかっているのは自分自身。どうすれば作った機能を理解してもらえるか。その機能の特徴を拡張したり、削ったり、さらに実装していくために新たな技術を学んだり。一人でも多くの人に使ってもらえるように改善していきます。もちろん人に見せるポスターも、さらによいものにすべくポスターに直接赤字を入れているトレーニーも居ました。難しそうな表情もありましたが、ほとんどのトレーニーは動くデモを見てもらえてること自体がとても嬉しそうで、生き生きとしていました。
奥道後を散歩してリフレッシュ!
リフレッシュタイムには奥道後を散歩しました。12月に入ってもまだ紅葉に彩られています。滝と小さな橋がありました。橋の先には小道があり、小道の先は山道となっており、「何もないよ」という事務局からのアドバイスがあったのですが、自分の目で確かめたいと、そこを探検する冒険チームができました。一方、無難に別のルートをふつうにお散歩するチームもできて、それぞれ分かれて行動しました。冒険チームは、何かを発見できたのだそう。(何が発見できたのか教えてくれなかったのですが、それってもしかして、「かけがえのない友情」という「無形」なものではないかしら)
修了生3人によるLT大会!うち一人は現役トレーニーのお兄さん!?
好評な修了生招待LT(Linghtning talk)、今回お招きしたのは優秀作品として選ばれた「Cyship:仮想空間でサイバー攻防を体験できるゲーム」と「シンボリック実行エンジンTritonのマルチアーキテクチャ対応」の青木さん、「ダークウェブ統合分析プラットフォーム」の小野さん、そして6人チームメンバーの一人「お家の状態が一目でわかるIoTデバイス管理システム」の青池さん。
- トップバッターは小野さん。一人チームの辛さ、それを乗り越えるためのコツ、SecHack365のその後をお話してくれました。SecHack365年間を通して「今がちょうど辛い時期じゃないですか」の問いかけがありました。10月のポスター発表から周りとの差を見せつけられるので、後半からが辛くなるのだと、その経験を共有してくれました。さらに一人チームだと、広がって収拾つかなくなってしまいそれが壁となったのですが、やりたいことを一つずつ削り、本当にやりたいことが何かを考えそれに集中したこと。そして一人チームは、とにかくフィードバックをもらうことがうまくいかせるコツだそうです。フィードバックによって内容に隙が無くなるので、それによってプロダクトを改善できるのだそう。
- 続いて青池さん。青池さんはご兄弟が今年のトレーニーとして参加しているのです。とても珍しいケースですね。イケメンのほうが弟、とのことでした。(会場からは笑い声が)チームで開発を行った青池さんはバックエンド側を担当。12月回から「音信不通」になりがちで、発表会ではデモを動かすことができず動画で流したりなど不本意なことが起きてしまったそうです。1人チームだけでなく、複数のメンバーによるチームにも問題は起こり得るとの教訓を語ってくれました。終わってしまうと後悔することは多いので、「今出し切れる最高の力を存分に出してほしい」というのに加え、「たくさん交流してほしい」とのことでした。
- 続いて、青木さん。青木さんは2つの作品を手がけ、一つはチームで参加、もう一つは個人で作りました。両方とも優秀作品として最終選考で選ばれたという事実が、彼の力量を表していると思います。現在はセキュリティエンジニア1年目としてお勤めしているそうです。そしてLTでは、チーム開発はレバレッジが効くとのことで「チーム開発は社会人の必須スキル」と開発のポイントを教えてくれました。今年のトレーニー達はチームをあまり作っていないので、少し残念に思っているようでした。また、「SecHack365では集合回での機会を存分に活かそう」というアドバイスの他に「参加するからには賞を取って帰ろうな!」とのこと。この言葉で、トレーニー達はやる気で漲ったようです。
修了生のみなさん、ありがとうございました。
現実世界とデータの世界の橋渡し役
トレーニーはAIやディープラーニングの技術に関心があるのでは?ということでお招きしたNextremer・高知AIラボの興梠(こうろき)さん。ねとらぼでも取り上げられた「みやこ昆布を見分けるロボット」、みなさんご存知ですか?実はこれはロボットの実機での練習ではなく、データ上で30万回練習させると、実機でうまく使えるようになるんだとか。単に”データ”といっても、現実世界の“色の変化”を考慮・想定をして、そのデータに工夫を施しているのだそうです。AIの現場ならではの、モノづくりのヒントを教えてもらいました。興梠さん、ありがとうございました。
落語で表現の“プロの技”を知る
愛媛大学工学部出身の落語家、桂三幸さんをお招きしました。愛媛ならではのスペシャルゲストです。桂三幸さんはPCやスピーカーまで持参、登場するだけで会場から笑い声が。そしてマイクを持って、サングラスをし、歌も披露してくれました。グローブを持ってトレーニーとキャッチボールを始めたりで、何が出てくるかわからない斬新な(!?)落語に会場は大盛り上がり。質問コーナーでは、ネタ仕込みにブレがないようにすることなどの表現の技や、人に伝えるための苦労や準備など、表現のプロとしてのお手本や心構えを教えてもらいました。桂さん、ありがとうございました。
最終日、対面で相談できるのもこれが最後
いよいよ最終日。次回沖縄までには完全に動くデモと、それを魅せるためのポスターやプレゼン発表が待っています。3月の成果発表会のプレゼン発表の権利を獲得できるチームはごくわずか。選ばれるためにどう改善していけばいいか、トレーナーとトレーニーたちは真剣に話し合いをしていました。
最後に集合写真。沖縄回までがんばるぞー!えいっ えいっ えいっ、おー!