SecHack365 2019 第7章 レポート 優秀修了生からのメッセージ

SecHack365 2019 第7章 優秀修了生からのメッセージ2020.04.22

  • sh365
  • こんにちは。NICT鎌田です。本来でしたら、3月6日に2019年度の成果発表会を実施する予定でした。この未曽有の危機であるコロナウィルスの影響で残念ながら会は延期となりました。
    延期となった成果発表会は、運営内部では何とか、2020年度中には開催できるように話し合っています。いつ開催するにしても2019年度の修了生にとって、その時にできるベストな形で実施できるよう努めたいと思います。開催が決まり次第、Webページで告知します。
    そして、SecHack365 2020年度の4月1日からの募集も延期となりました。こちらも5月頃にはWebページにて状況をお伝えしますので、応募をご検討の方はぜひチェックをお願いします。

    さて、前置きが長くなりましたが、2019年のトレーニー達が3月で無事修了し、修了生となりました。TwitterやSNS上などで修了証が届く喜びの声もチラホラ散見されました。個人ブログで、このように感想を寄せてくれた修了生もいます。

    「思いを馳せると限りがありませんが、みんなの楽しそうにモノを作り紹介する姿、思い悩み苦しむ姿、寝食を共にしたからこそ見えた何気ない人間性や育ち、そして美しい景色の記憶は、きっとこの先何度もぶつかる困難に立ち向かう為の糧となるのだと思います。」

    そして今年も優秀修了生として選ばれた7名(6タイトル)の方々がいます。彼らにオンラインでインタビューをしました。
    横山トレーナーからのメッセージもありますので最後までお付き合いください。

2020優秀修了生にオンラインインタビュー!

優秀修了への認定おめでとうございます。優秀修了と認定された修了生にインタビューをしてみました。

Q1. みなさんは優秀修了生として選ばれましたが、感想はいかがでしょうか。
Q2. どのようなものを作られたのですか、かんたんに教えてください。
Q3. たくさん努力されたと思います、1年を通して難しかった、苦労したことなどを教えてください。
Q4. 次年度に応募される方へ、メッセージをお願いします。

藤原 出帆(Izuho Fujiwara)さん

藤原 出帆 藤原出帆さんの作品「暗号通貨サービスとQRコードを活用した署名システムの提案」はこちら

A1. 優秀な(いい意味で)頭のおかしいトレーニーがたくさん参加されている中、優秀修了を頂けたことはとても嬉しいです!長期ハッカソンを通じてお世話になったトレーナー、トレーニーのお陰で頂けた評価だと考えているのでこれを次に活かし様々なことにチャレンジし続けたいと思います。

A2. 私は「仮想通貨サービスで利用者の資産をセキュアにカジュアルに扱うことができる署名システム」を作りました。利用者の仮想通貨資産の取り扱いに必要な権限を、仮想通貨サービスの提供者側ではなく、QRコードという形で利用者に持たせることで、利用者が安全に資産管理できるシステムです。利用者にとってのわかりやすさにも留意しており、安心してサービスを利用できるようになります。

A3. SecHack365では1年間に何回も自分の作っているものをトレーナーやトレーニーに自慢する場があります。自分が何を作っていて何を伝えたいのかを聞き手に伝える為に、簡潔にわかり易く資料やポスターにまとめる必要があるのですがとても難しかったです。

A4. SecHack365には様々なコースがあり、様々な面で精通されているトレーナーがたくさんいらっしゃいます!また、通常ではできないようなこともたくさん体験することが出来ます。365日という1年スパンの長いハッカソンですが完走した時には達成感と確かな自信を得られるはずです。自分に合うコースを選んで応募しまずはスタートラインに立ってみてください!

喜多村 卓(Taku Kitamura)さん

喜多村 卓 喜多村卓さんの作品「セキュアコーディングを身近にしたいから YouTuber になってみた」はこちら

A1. SecHack365に参加する際に決めた目標は「全力でやりきる」ことだったのですが、その目標も達成し、また優秀修了生に選ばれたのは周りに恵まれていたからだなと思っています。とても嬉しかったです。

A2. 私はセキュリティを身近なものにしたいという思いで、キーワードや関連キーワードの選択によって検索が可能な、検索に不慣れな方でも求めている情報を検索できる自作検索エンジンの開発。YouTubeへセキュリティ知識を学べる動画の投稿。プログラム開発中の入力やデバッグなどの操作の様子を、Web上で他の人と簡単に共有することができるツールの開発。という3つの成果物に取り組みました。

A3. 考えた成果物が誰かの役に立つのかなどについて何回も考え、それを開発し、また考え開発するということを繰り返していました。最終的にはこれが良い結果に繋がりましたが、途中で不安を抱くことも多々ありました。

A4. SecHack365は、セキュリティに関する様々な知識を得られることはもちろん、全国各地のあなたと同じような志をもった仲間と出会える機会にもなるということは大きな利点だと思います。これは地方在住の方にとって貴重な機会になりうるはずです。実際私もそうでした。参加する方は是非楽しいSecHackライフを!

鈴木 豪(Go Suzuki)さん

鈴木 豪
  • 鈴木 豪
  • 鈴木 豪
鈴木豪さんの作品「KAMPPHER - ディスクI/Oのハードウェアモニタリングによる不正な書き込み防止機構」はこちら

A1. 自分は選ばれそうにないと思っていたので驚きました。それでも、自分が優秀修了生に選ばれたのは一年の頑張りが認められたのかなと思います。コメントをくれたトレーナ ーとトレーニーの皆さん、そして頑張った自分、本当にありがとうございました!

A2. IoT機器で動作しているプログラムファイルを、ハードウェアで守る装置を開発しました。IoT向けのコンピュータウィルスには、IoT機器上で動作するプログラムを改竄して乗っ取るようなものがあります。SDカードなどの記憶装置への書き込みを監視して、書き換えられたくないプログラムを保護する、IoT機器とは独立したハードウェア機構を開発しました。

A3. 「魅せること」です。SecHack365では作るだけでなく、展示・発表など魅せることも大事です。私のものは地味で、動作がわかりにくいので、視覚化システム(NICTERを参考にしました!)を作り、発表を工夫して、動きが良く分かるようにしました。

A4. SecHack365では様々な分野に詳しく、様々な特徴的で個性豊かな仲間に出会えます。物を作るだけと思いがちですが、それだけではありません。みんなの発表を聞いたりして色々な分野を知ることができ、多様な視点を持つことができます。ぜひ、SecHack365に応募して、発表を聞くことも楽しんでみてください!

麻生 航平(Kohei Aso)さん

麻生 航平 麻生航平さんの作品「イルミパケット:パケットが光るLANケーブル」と「セキュリティ芸人」はこちら

A1. セキュリティ芸人という一見ふざけているような成果物もこのような形で認めていただけて光栄です。セキュリティ博物館も含め、多くの人がセキュリティに興味を持つきっかけになってくれると嬉しいです。

A2. 「セキュリティ博物館」の展示物として、通信しているパケットを可視化するLANケーブルを作成しました。例えば、Webサイトに接続するとDNSのパケットがヒュンヒュンと往復する様子が確認できます。加えて、ITの関連技術がわかる人向けのお笑いネタを披露する「セキュリティ芸人」というのをプロデュースしました。

A3. 公開するライセンスを決定するのに非常に悩みました。特許や著作権などといった知的財産について右も左もわからない状態で、自分の作品をどう守りどう普及させていくべきなのかを考えさせられました。熟考の末、さらなる可能性を追求して欲しいという思いを込めて、改変・再配布自由なライセンスで提供することにしました。

A4. あなたの想像を遥かに超える一年が待っています。SecHack365には、ポテンシャルを最大限に発揮できる環境があり、自分のやりたいことを尊重して、尖った部分を伸ばしてくれました。ここでの出会いや出来事は人生を変える経験になります。ものづくりが大好きなみんなと楽しい時間を過ごしてみませんか?

大橋 滉也(Koya Ohashi)さん

大橋滉也 大橋滉也さん/大森貴通さんの作品「個人開発者向けWebサービス運用フレームワーク Trinity」はこちら

A1. 1年間通しての活動成果を、優秀修了生という形で認めていただけたこと大変嬉しく思います。このチームは僕がわがままで作りたい!と言って結成したので、巻き込んだことに対して結果で応えられたようで、ホッとしています。

A2. 大企業が利用しているWebサービスのデプロイや監視の仕組みを、個人開発者でも簡単に導入・利用できるようにするソフトウェア、「Trinity」を開発しました。TrinityはWebサーバ上で動作する軽量プログラムです。Trinityを利用することで手軽に自動HTTPS化やGitHubと連携した自動デプロイ、Slackへのアラートなどを行えるようになります。

A3. 卒業研究とSecHack365との両立が非常に大変でした。また、チーム結成時から大きく作るものもメンバーも変わり、それらをリーダーとしてまとめながら自分も進捗を出すというプレッシャーにも苦労しました。

A4. トレーナー・トレーニー共に想像以上に多様で、交流を通して自分の価値観がぐんぐん押し広げられていく感覚が非常に面白かったです。技術面でも精神面でも大きく成長できたと思います。みなさんがSecHack365に参加したいという気持ちが少しでもあるなら、ぜひチャレンジしてみてください!

大森 貴通(Takamichi Omori)さん

大森 貴通 大森貴通さん/大橋滉也さんの作品「個人開発者向けWebサービス運用フレームワーク Trinity」はこちら

A1. チームとして活動を始めた時から、優秀修了生を目指して頑張ろうと大橋くんと話していました。その後約半年間の開発と発表を頑張ることができ、目標通り優秀修了生になることができてとてもうれしいです。

A2. 自分でWebサービスを作って公開する人には人数・お金・時間の面で課題がたくさんあります。 Trinityはそれらの問題を解決し、Webサービスを運用する個人開発者を助け、Webサービス運用をかんたんにするためのフレームワークを作りました。

A3. チーム開発を行ったのですが、僕は愛知県に住んでいて大橋くんは東京に住んでいたことや、お互い最終学年であったため研究が忙しくなかなか開発ができない時期がとても難しかったです。

A4. 学校にいるだけでは得られない全国の学生とのつながりが得られるため、SecHackでの一年はとても濃密なものでした。また、集合イベントでは日本各地を回って為になる講演を聞くことができます。もし迷っているのであれば、とりあえず応募してみることをお勧めします!

コートニー エリオット(Eliot Courtney)さん

エリオット・コートニー コートニー・エリオットさんの作品「コンピュータ技術を作り直すmemepu(仮」はこちら

A1. 優秀修了生として選んでいただいてとても嬉しいです〜!memepuにはセキュリティ的な価値があると認めてもらって単なる個人プロジェクト以外に使い道があると確信できました。これでちょっと自信がついたので、いろいろやっていきたいと思います!

A2. 簡単なロジックICやメモリICからコンピュータ技術を作り直すプロジェクトです。SecHack365で取り組んだのはCPUハードウェア定義、アセンブラ、CPUシミュレータ、回路図自動的生成プログラム、ファームウェア自動的生成プログラム、自作言語です。作り直すことで、低レイヤーから高レイヤーまでの理解を深めました。

A3. やはり毎週時間を有意義に使ってSecHack365を習慣としてやっていくのが大変でした。最後の方は自作言語を作っていて、それが予想以上に難しくて苦労しました。

A4. 私は最初、応募するかどうか悩みましたが、応募して本当に良かったなと思います。基本的に、なにか(プログラム、イベントなど)に参加して後悔した経験は滅多にないので、とりあえずやってみるという気持ちは大事だと思います。

 

「SecHack365トレーナーから、愛のメッセージ!」
一年間のSecHack365の活動、おつかれさまでした!

みなさんは、この活動を通じて、自分で考えたものを自分で完成させるということが出来るようになったと思います。まずは試しに何か形作り、それを見せて意見をもらい、意見を基によりよいと思う方向に次のものを作る。身につけたのは、何を作ったらいいかはっきりわからないことについて、まず手を動かしながら、探索的に継続的によいものへと近づけていく方法です。

私たちは、こうした方法を知ることが、変化の激しいセキュリティの状況に対して、適応的に対応できる人材になれると考えます。また、探索の中で価値の最大化を図ることは、価値とセキュリティコストをバランスしたものづくりを可能にすると考えます。こうした方法により、セキュリティの問題を解決したり、セキュリティを意識したものづくりに取り組んでもらいたいと思います。

修了後は、自分の作ったものを社会に向かって届けることに挑戦してみてください。社会に見せることで、厳しいことも言われるかもしれませんが、すべては助言です。作ったものはなくなりません。作り続ける先に、みなさんの社会への貢献、社会の中での成功が待っていると思います。自分の考えを大事にしてやりきる頑固さ、他人の意見を聞いて取り組む素直さの両立。大きな挑戦の小さな挑戦への分解。見せるため、手段としてのものづくり。SecHack365で経験したことを、みなさんの次の挑戦に活かしてもらえれば嬉しく思います。

私たちの望みは、そうしたみなさんの成功とともに、セキュリティ的な意識をもった人材を社会に送り届けることです。みなさんの社会の中での成功を願っています!

SecHack365 2019 トレーニー作品一覧へ レポートの一覧へ

お問い合わせContact