SecHack365は続くよどこまでも| SecHack365 Returns 2019 番外編

SecHack365は続くよどこまでも(SecHack365 Returns 番外編)2019.10.30

こんにちは、NICT鎌田です。9月28日秋葉原にて、SecHack365 Returnsが開催されました。SecHack365 Returnsとは、修了生の継続活動を支援する特別イベント。昨年度から開催しています。
今年度も多くの修了生が集まりました。朝から会場入りしている運営スタッフと修了生運営チーム、じわりじわりと集まる修了生。全員が揃った頃には会場は同窓会ムードなほんわか空気に包まれていました。技術者の講演や、修了生の特別企画、活動報告、そして修了生の修了後の成果発表がありました。はじまりは、EyesJapanの山寺純さんによる講演です。

技術者講演〜言われたことをやっていては世界を変えられない〜

山寺純さんは、福島在住で起業してから168年とのこと。168年という数字は、IT業界の1年は通常の業界の7年に相当するらしく、そうすると168年なんだそうです。(エンジニアらしい考え方ですね)現在はEyesJapanの社長さんですが、社長になる前はディズニーランドのジャングルクルーズで働くなど、面白いことにチャレンジされるのが好きだったそう。

ユニークなことが好きという性格は会社の経営でも発揮されます。社員のストレスを解消させるために、オフィスにサンドバックを置いていて、このサンドバックにはご自身の顔写真を貼り付けているのだとか。社長に不満のある方はとりあえず殴ってみてくださいという試み...(笑)IoTを駆使してどのぐらい殴られているのかを検知しようとしてみたそうですが、個人情報が取れるとそれはそれで問題になるので、それがわからない形で数値化にすることもしているのだとか。実際のところ、辞めていく社員はサンドバックを殴らずに静かに辞められるそうなので、もっと活用してほしいとのことでした。(最高に面白いですね)

会社のスタッフと組み、ハッカソンや脆弱性を発見するコンテストにチャレンジしては賞を取るなど、ハッカーとしても活躍されています。しかし、賞をとったからといって浮かれられないのが現実で、セキュリティの脆弱性を見つけてそれを指摘する仕事というのは、企業によっては怖がられて簡単には受け入れてもらえないということがあるのだそう。スキルがあったとしても、それを仕事に変える難しさや壁があることなどをお話いただきました。
「尖ったことをやっていると褒めてくれる人は少なく、このような場所はほんとうに特別な場所だ」と前置きをして、褒められるとそれはそれで悪い方向に行く可能性もあり、セキュリティ技術でやらかすと逮捕されてしまう現実があるということも注意されていました。
世の中の実態は、一度前科がついてしまうとそれだけで大変な思いをすることになります。
そのうえで、挑戦しつづけること「吟味されない人生に意味はない」とメッセージを残し、講演を終了しました。

修了生企画の修了生によるイベント

ベテラン技術者講演のあとは、メインステージでは修了生の藤田さんから「Elmのお話」、白倉さんから「OSSライセンス入門」と2つの講義スタイルのコンテンツ提供。その裏でクイズ大会が行われました。大人たちもこっそり参戦。難しいクイズの内容に数十人がチャレンジしました。チャレンジャーたちには、トレーナーからの景品が提供されるというおまけつき。みんなで大いに盛り上がりました。

継続するための原動力はどこから

休憩を挟んでの次なる演目は修了生活動報告。秋田さん、澤さん、古川さん、三須さん、宮川さん、山本さんから、SecHack365修了後の現在の活動の様子の発表がありました。(演目タイトルは下記一覧より)

秋田賢さん
 「SXSW訪問で感じた世界に広まるサービスを作る方法」
澤佳祐さん
 「秘密計算技術の可能性と実装」
古川菜摘さん
 「普通の大学院生が授業作ってみたーバグハンティングコンテストによせてー」
三須剛史さん
 「SecHack365が教えてくれた」
宮川大星さん
 「ExGDBの新機能とその他SecHack365以降の成果」
山本悠介さん
 「米国で行われるCanSatの打ち上げ実験ARLISSに参加してきた」

宮川さんのお話の中では、「コマンドを “たくさん作り過ぎて” いるので、全部紹介できない為、“仕方がないから” 一部を」といったことをさらっと語りながら、制作している同人誌を活用しつつ、制作したコマンドの解説をされていました。そしてまた書きたい本の構想があるとのこと。あたりまえのように作り、書き続けている姿が輝いて見えました。

CanSatの教育キット(発表タイトル「CanSatをはじめよう」)を制作して修了した山本さんはCanSatの現地アメリカでの旅行記を発表しました。成功体験と思いきや、車上荒らしに遭ってしまいバックを盗まれたとのこと!! そしてそのバッグ中にCanSatも入っていたとのこと!! なんと!!(普通の人はここで絶望モードになり、開き直って観光モードに切り替わってもおかしくありません)山本さん達は急遽パーツセンターへ直行つつ、即時で作って仕上げて対応したという…(ハッカソン慣れしたこの臨時対応能力)なかなか他では聞くことの出来ないドラマチックな展開のお話をしてもらいました。そして、SecHack365パーカーを着て登山エクストリームなハッカソンフォトなども披露。
修了して1年も経っていないのに、とてもたくましくなった彼らの姿をみて、目頭が熱くなってしまいました。

会社起こすだけが目標じゃない

初年度の優秀修了生、Cyshipチームの北村さんと川島さん(青木さんは都合つかず欠席)が修了生成果発表枠を獲得し発表しました。

その中で人生目標についてお話がありました。北村さんは日本の教育を変えたいと、明確に目標を掲げています。進学校に通っていた北村さんは、学校生活の中で理解のできないことに多くぶつかり、悩むことがありました。この時に感じた疑問や違和感をきっかけに、将来教育を変えたいと心に決めたそうです。そして、既存の評価の枠に収まらない子供達を助けるために、財団を作ることを人生の目標にしました。
今年Cyshipチームは「株式会社Cyship」を設立しましたが、そこだけがゴールではありません。日本の教育のことを本気で考えて、ひとりひとりの子供達と向き合おうとしています。発表後にはトレーナーの横山さんからこんな質問がありました。

横山さん 「なぜ会社という形にしたのか。もう一点は、どういう人が会社を作るのがいいのかというところが聞きたいです。」
北村さん 「最初の質問の答えは、大きな仕事が来たときにお金の処理をするために会社にする必要があったからです。
二つめは、“社会不適合者”が会社を起こすのが向いていると思っています。自分が所属する大学では起業部があり、そこでいろんな人を見たり、起業について考えたりしているのですが、朝起きられない、上の人の言うことを素直に聞けない、という人たちが起業に向いていると思ったからです。」
横山さん 「会社を継続するために必要なことは何でしょうか」
北村さん 「情熱がないと難しいかなと感じています。ですのでそのために“人生目標”が必要だと思っています」
横山さん 「ありがとう」

この後、休憩のあと表彰式がありました。表彰式では、NICTの徳田理事長から「ビジョン、ミッション、パッションが大事だ」と北村さんの“情熱”とも通じるお話がありました。
「継続」し続ける「情熱」がより熱くなる、来場した人全員の心に残る修了生イベントでした。

 

「SecHack365スタッフから、愛のメッセージ!」
平田 真由美
SecHack365Returns担当の平田です。
みんながもどってきたくなるそんな場が作りたい。
できれば巣立っていったトレーニーたちが、SecHack365の仲間たちと一緒にお互いに刺激を与えあい、高めていける場になるといい。
1年間続けてきたモノづくりを修了後も続けていける場があったら。
そんな想いで前回そして今回2回目となるSecHack365Returnsを開催してきました。
1期生と2期生が協力して「修了生による修了生のための修了生が考える企画」を実施したのが今回のハイライト。この企画をきっかけに修了生コミュニティが立ち上がる話もでています。今後Returns以外でも自分たちの活動を広げて、イノベーティブなモノづくりを続けていってくれることを期待しています。
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